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 隠しカメラによる盗撮が大きな脅威になっている。超小型で低価格の隠しカメラが多数販売されているためだ。

 レンズの直径は1~2mmと小さいので、隠しカメラが埋め込まれた物体が目の前にあっても気づきにくい(図1)。そしてその多くは、ネット通販などで数ドルから数十ドルで購入できるという。

図1●隠しカメラの埋め込み例
図1●隠しカメラの埋め込み例
レンズの直径は1~2mmと小さいので、隠しカメラが埋め込まれた物体が目の前にあっても気づきにくい。しかも数ドルから数十ドルで購入できるので、隠しカメラによる盗撮は世界的な問題になっている。(出所:LAPD: Hidden Spy Camera Detection using Smartphone Time-of-Flight Sensors(Teaser Video))
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 隠しカメラを検知する専用の機器はあるものの、高価であったり有効性に制限があったりする。

 ところが今回、シンガポールと韓国の研究者らが、市販のスマートフォンを使って隠しカメラを探し出せるアプリを提案した。実験での検出率は肉眼では46.0%だったが、そのアプリでは88.9%だったという。一体、どんなアプリなのだろうか。

隠しカメラが世界的な問題に

 研究者らによると、隠しカメラを使った盗撮は世界的な問題になっているという。ホテルの部屋などに隠しカメラが設置され、プライバシーに対する大きな脅威になっている。例えば韓国だけでも、1年間に6800件を超える報告があったという。

 隠しカメラを見つける方法は複数ある。その1つが隠しカメラの無線トラフィックを検出する方法だ。

 だがこの方法では、その部屋に隠しカメラがあることは分かっても、置かれている場所までは特定できない。また、内蔵のメモリーカードなどに録画するタイプの隠しカメラは見つけられない。

 隠しカメラを光学的に探し出す「隠しカメラ検出器」もある。検出器のLEDからは赤色光が照射される。周囲に隠しカメラがあるとその光がレンズで反射するので検出できる。

 肉眼よりは効果的であるものの、隠しカメラ以外からも光が反射するので誤検出が多いという。検出器を絶えず持ち歩かなければならないのも不便だ。

 そこで研究者らは、個人が所有するスマホで隠しカメラを見つける方法を提案した。2021年11月中旬にポルトガルで開催された、組み込みネットワークセンサーシステムに関する国際会議「ACM SenSys 2021」で発表した。