前回(連載第2回)で解説したように、日本のMVNO▼の多くはライトMVNO▼であり、携帯電話事業者(MNO▼)の設備とレイヤー2接続▼をしている。ライトMVNOのレイヤー2接続では、インターネットや外部のIPネットワークとのゲートウエイとなる設備をMVNOが運用している。このためMVNOが通信ポリシーや課金をある程度コントロールでき、独自のサービスを提供できる。
とはいえ自由度はそれほど大きくはない。パケット交換機(GGSN▼/PGW▼)以外は携帯電話事業者が提供していて、通信ポリシーや課金以外では差別化を図れない。
そこで登場したのが、より自由度の高い「フルMVNO」という事業モデルである。
フルMVNOとは、携帯電話のコアとなるネットワークを自ら運用するMVNOを指す。ただし「フル」といっても、コアネットワークのすべてを運用する必要はない。一般的には、ライトMVNOが運用するゲートウエイ(パケット交換機)に加え、加入者管理装置を運用しているMVNOがフルMVNOと呼ばれる。
ここでの加入者管理装置とは、加入者(ユーザー)に関する情報を管理するデータベースのこと。3GではHLR▼、4GではHSS▼と呼ばれる。
国内では、筆者の所属するインターネットイニシアティブ(IIJ)やソラコム、さくらインターネットがフルMVNOに名乗りを上げているが、まだ非常に少ない。IIJが2018年3月に開始したフルMVNOのネットワークアーキテクチャーの国内部分を図1に示す▼。
IIJは、NTTドコモとのMVNO契約(卸電気通信役務契約)に基づき、同社をホストMNO▼としてフルMVNO事業を開始した。データ通信用のネットワーク(UPlane)は、既存のライトMVNOの場合と同じ。パケット交換機はMVNOが運用する。
異なるのは、制御信号用ネットワーク(C-Plane)の加入者管理装置(HLR/HSS)である。ライトMVNOでは、加入者管理装置は携帯電話事業者の設備だが、フルMVNOは加入者管理装置を自社で持ち、運用する。