MVNO▼が提供する、いわゆる「格安スマホ」のサービスでは、端末とSIM▼カードが別々に提供されることが多い。このため、これまで利用者がほとんど意識することのなかったSIMカードが注目されるようになった。そこで今回は、SIMカードおよびその進化形であるeSIM▼について解説する。
FOMAから使われ始めた
まずSIMカードについて説明しよう。SIMカードは、物理的には接触式ICカード、すなわちスマートカードの一種で、クレジットカードやテレビのB-CASカードなどの仲間である。プラスチックカードにICチップが埋め込まれ電極が付いている。スマートカードのうち、携帯電話事業者が加入者識別のために使うものがSIMカードと呼ばれる。
SIMカードが日本で使われるようになったのは2001年以降。NTTドコモが提供する第3世代携帯電話サービスFOMAの開始に合わせて国内での利用がスタートした。それ以来、機能とサイズの二つの面で進化を続けている。
機能面では、4GLTE▼やVoLTE▼、NFC▼といった新しいサービスが提供されるたびに、携帯電話事業者はそれに対応した新しいSIMカードを提供してきた。
サイズ面での進化は小型化である(図1)。NTTドコモが日本で最初に導入したSIMカードのサイズは縦25mm、横15mm。名刺サイズのプラスチックカードの一部となっていて、利用時に切り離すものである。後述するように、その後、より小型のSIMカードが登場したことで、このサイズのSIMカードは「標準SIM」と呼ばれている。標準SIMはminiSIMとも呼ばれる。
ソフトバンクは2010年、iPhone 4と同時に、縦15mm、横12mmの「microSIM」の提供を開始。2012年には、KDDIとソフトバンクがiPhone 5とともに「nanoSIM」を提供している。nanoSIMのサイズは縦12.3mm、横8.8mm。現在では、Androidを含め多くのスマートフォンがnanoSIMに対応している。
以上のように3種類のサイズのSIMカードが存在するわけだが、従来は利用者が混乱する心配はなかった。SIMカードは、新しいスマートフォンを購入する際に販売店の店員が準備し、スマートフォンに挿入するものだったからだ。ところがMVNOが提供するサービスでは、端末とSIMカードが別々に提供されることが多い。このためSIMカードのサイズが複数あることが、利用者に混乱をもたらす可能性が出てきた。
現在では、3種類すべてのサイズに対応している▼SIMカードもMVNOから提供され始めている。ただ、端末の仕様表には対応しているSIMカードのサイズが明記されているものの、利用者が誤って異なるサイズで切り離してしまうトラブルが少なからず報告されている。
SIMカードに保管されている情報についても説明しておこう。SIMカードのICチップに保管される主な情報(番号)は3種類ある(表1)。このうち最も重要なのが、加入者を管理するIMSI▼である。このIMSIを独自に管理するためにはフルMVNO▼となり、独自のMNC▼を割り当ててもらう必要がある。
独自のMNCを持たない、いわゆるライトMVNO▼は、ホストMNO▼から貸し出されたSIMカードを利用者に提供する。SIMカードを発行および管理するシステムをホストMNOから貸してもらい、そのシステムを使ってSIMカードを発行(プロビジョニング)し、利用者に提供する場合もある。これらのケースでは、利用者にSIMカードを提供するのはMVNOだが、SIMカードそのものやSIMカードに保管されているIMSIは、ホストMNOのものとなる。