日本初の電気による街灯が東京・銀座で点灯したのが1882年。それ以降、国内のあらゆる場所に電力網が張り巡らされてきた。この電力網が「100年に1度」の変革期を迎えている。事業者と利用者で電力を融通し合う「スマートグリッド(次世代送電網)」の取り組みだ。
更新期迎えるスマートメーター
スマートグリッドの実現には、リアルタイムで電力の利用状況を把握する仕組みが欠かせない。そこで使われるのが「スマートメーター」だ(図1)。スマートメーターは電子式の電力/ガス/水量計で、通信機能を組み込んで利用者側のエネルギー使用量を遠隔監視できる。
電力業界では東京電力が2014年に導入を始めたのをきっかけに、従来のアナログ方式からの本格的な置き換えが始まった。
工場やオフィスビルなどで使用される高圧用のメーターは、2016年度に導入が完了した。一般家庭などで使用される低圧用は、2024年度末までに導入を完了する予定だ。
仕様統一で調達コスト低減
電力メーターの使用期限は最長10年と法律で定められている。つまり2024年には、最初期に導入したスマートメーターの交換が始まる。これを機に、さらに高度な利用が可能な次世代メーターに置き換えることが計画されている。電力需給の安定化や、利用者側の利便性向上などを狙う。
電力用のスマートメーターは、電力使用量などを計測する「計量部」と、計測したデータを送受信する「通信部」で構成される。現行の低圧用メーターは2種類ある。東京電力パワーグリッドや中部電力パワーグリッドなど8社が採用する「一体型(計量部と通信部が一体)」と、関西電力送配電と九州電力送配電が採用する「ユニット型(計量部と通信部が分離)」だ。次世代型に関しては「調達コストの低減や事業者間でのメーターの融通性などを考慮して、一般送配電事業者10社で仕様を統一する」(送配電網協議会)方針だ。
なお一般送配電事業者とは、電力自由化の一環として発送電分離により独立した送電網の運営会社を指す。
次世代規格がほぼ確定
資源エネルギー庁は2020年9月から2022年3月にかけて「次世代スマートメーター制度検討会」を開催し、有識者や業界関係者を集めて次世代型に求められる機能などを検討した(図2)。同庁は2022年3月8日、同検討会によるとりまとめ案を公開。同年3月下旬時点では、同案に対するパブリックコメント(意見募集)を実施している。パブリックコメントを反映したものを素案として、同年上期にも詳細な仕様書が作成される予定だ。
当初は、2024年度から次世代型への置き換えを始める予定だった。しかし、次世代型の議論を踏まえてスケジュールを精査し、1年遅らせることにした。このため2024年に使用期限を迎えるメーターは現行型の新品交換にとどめる。2034年度にすべてのメーターの置き換えを完了する計画だ。