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 かつてオートネゴシエーションの技術が未成熟だったころはトラブルが多く見られた。だが、「技術が成熟した最近ではあまり聞かなくなった」(ネットワンシステムズ ビジネス開発本部 第1応用技術部 データマネージメントチームの鈴木 淳志氏)。「例えば相性による問題などは、ここ最近経験したことがない」(ユニアデックス テクニカルサポートセンター テクノロジアーキテクチャ部 一課 課長の大須賀 怜氏)。

 一方でオートネゴシエーションは物理レイヤーで実施されるため、「通信の中身の解析が難しく、やりとりを調べられるツールが限られている」(ユニアデックスの大須賀氏)。ただ、典型的なトラブルの原因を知っていれば、解決の糸口をつかみやすい。ここではいくつかのトラブルと対策を紹介する。

選択された伝送速度が出ない

 オートネゴシエーションを有効にしたスイッチで、サポートする最高速度でリンクがつながっているのに、速度が出ないケースがある。これはLANケーブルの品質によるものだ(図3-1)。

図3-1●オートネゴシエーションで決めた伝送速度が出ない
図3-1●オートネゴシエーションで決めた伝送速度が出ない
オートネゴシエーションでは機器がサポートする性能だけで伝送速度を決める。このため、機器同士をつなぐLANケーブルの品質が低いといった理由で、思ったような速度が出ない可能性がある。
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 オートネゴシエーションはあくまで機器が対応する速度を決めるだけで、それらをつなぐLANケーブルの品質は考慮しない。例えば、10GBASE-Tについて、Cat.6AのLANケーブルなら最大100mまで10Gビット/秒の速度を出せるが、Cat.6では55mまで。それ以上の距離ではエラーが増えて速度が低下する。こうしたトラブルは「エラーフレームの数を調べればLANケーブルに問題があると分かる」(ヤマハ広報)。

 そうした場合の対処法としては、オートネゴシエーションでの最高速度をコマンドでスイッチに設定する方法がある。例えば、10GBASE-T対応のスイッチでLANケーブルがCat.5eの場合、10Gビット/秒ではエラーが発生するので、最高速度の規格を2.5G/5GBASE-Tに設定すればよい。

オートMDI/MDI-Xが無効に

 オートネゴシエーションを無効にすると、それと連動してオートMDI/MDI-Xまで無効になってしまう製品がある(図3-2)。オートMDI/MDI-Xとは、ストレートケーブルとクロスケーブルを判別し、送信と受信を適切に切り替える機能である。本来はオートネゴシエーションとオートMDI/MDI-Xは全く別の機能だが、連動するような実装を採用している製品があるという。さらに厄介なことに「無効になった際、MDIとMDI-Xのどちらで固定になるのか、同じ製品でもリビジョンごとに異なるものがあった」(ユニアデックスの大須賀氏)という。こうしたトラブルの原因もあり得ると念頭に置いておこう。

図3-2●オートネゴシエーションと連動してオートMDI/MDI-Xまで無効になる
図3-2●オートネゴシエーションと連動してオートMDI/MDI-Xまで無効になる
オートMDI/MDI-Xはストレートケーブルとクロスケーブルを自動的に判別して、送信と受信に使う端子を正しく設定する機能。本来オートネゴシエーションとは別の機能だが、オートネゴシエーションを無効にするとオートMDI/MDI-Xも無効になる実装のスイッチ製品がある。
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