DCは日本の各地にあるが、東京と大阪の近郊に特に多く立地している(図2-1)。東京エリアは主に東日本、大阪エリアは主に西日本のユーザー企業をカバーしている。ただし、大企業の場合は両エリアのDCを使用するケースが多い。情報システムが企業経営の基幹となった今、災害などによるシステムの稼働停止はビジネスを揺るがすリスクといえる。このため、事業継続計画(BCP▼)の一環として、メインとバックアップのシステムをそれぞれのエリアに置く。東京エリアと大阪エリアは地盤や電力系統が異なるので、大規模な災害が発生しても事業を継続できる可能性が高い。
両エリアに置くシステムはアクティブ・スタンバイ▼の構成にするのが一般的だが、システムの応答速度の向上やリソースの有効活用のためにアクティブ・アクティブの構成にする場合もある。
都市型DCと郊外型DC
それぞれのエリアを細かく見ていくと、小規模な都市型DCが東京23区内と大阪市内に、大規模な郊外型DCがそれらの近郊に多く立地している(図2-2)。東京23区内や大阪市内に多いのは、大手町や堂島などにあるインターネットエクスチェンジ▼(IX▼)やユーザー企業の拠点から近いからだ。通信環境が整っていて、ユーザー企業の拠点とも専用線などで接続しやすい。トラブルが発生したときなどに、担当者が足を運びやすいという利点もある。
一方、郊外型のDCは東京エリアでは三鷹市や多摩エリア(三鷹・多摩エリア)と、千葉県印西市の周辺(印西エリア)、大阪エリアでは大阪府吹田市や箕面市、神戸市などに多い。これらの地域に共通するのは「都市部に近い」「地盤が固い」「水害に強い」という点だ。
例えば、印西エリアへは都心から電車で1時間程度で移動できる。北総台地の丘陵地帯で活断層がないので地震に強く、海岸から20km以上離れていて周囲に大きな河川もないので水害のリスクも低い。しかも、都市計画に基づいて共同溝が整備されているので電柱や鉄塔が少なく、台風などの強風による影響も受けにくい。例えば2019年9月に発生した台風第15号では、電線が飛来物で切れたり鉄塔が倒壊したりして関東全域で大規模な停電が発生したが、印西エリアは電力ケーブルが管路なので影響はなかったという。
都市近郊でDCが特定のエリアに集中しているのは、「DCがDCを呼ぶ」という理由もある。大規模なDCは、大容量の電力と通信回線を必要とする。このため大規模なDCが建つと、周辺の電力や通信回線の設備が整備される。そして、こうしたインフラを目当てに、他の事業者も次々とDCを建設するものである。
例えば、三鷹・多摩エリアと印西エリアはもともと、金融機関の電算センター▼や通信事業者などのDCがあり、インフラがある程度整備されていた。特に金融機関は、メインとバックアップのシステムをそれぞれのエリアに置いているケースが多い。このインフラに注目したDC事業者やシステムインテグレーターが進出したことで、両エリアでの集積が進んだ。