量販店の店頭や通販サイトに「Wi-Fi 6対応」の無線LANアクセスポイント(AP)を見かけるようになった。Wi-Fi 6は、最新の無線LAN規格「IEEE 802.11ax(以下、11ax)」を分かりやすく示す名称としてWi-Fiアライアンス▼が提唱しているもの。つまり、Wi-Fi 6対応とは11ax対応を指す。
11axの標準化作業は、2019年7月時点で完了していない(図1)。Wi-Fi 6対応の認定を受けるためのプログラムが決まるのもこれからだ。だが、11axの技術仕様が2018年7月に承認されたことを受け、各社とも先取りして製品を開発し、Wi-Fi 6対応と自称して販売している状況だ。
最新の技術を搭載した製品を使うと無線LANはどう変わるのだろうか。登場したばかりの対応製品を使って、その実力を試してみた(表1)。
大きく進化したWi-Fi 6
Wi-Fi 6は、1つ前の規格IEEE 802.11ac▼(以下、11ac)と比べて複数の改善が施されている。性能やスループットに関連する改善点は主に3つある(図2)。
1つめは、周波数を多重化する方式としてOFDMA▼を採用したことだ。OFDMAでは、1つのチャネルをリソースユニットという単位で区切り、異なる端末で利用できるようにした。これにより、1つのチャネルで最大9台の端末が同時に通信できる。これに対し、11acのOFDM▼では1つのチャネルを1台で占有していたので、マルチユーザー環境では周波数の利用効率が悪かった。
2つめは、符号化方式として1024QAM▼を追加した点だ。1度に伝えられる情報量が、11acの256QAMでは8ビットだったのに対し、1024QAMでは10ビットに増える。単純計算で速度が1.25倍に向上することになる。
3つめが、伝送路を多重化するMU-MIMO▼が上り方向でも使えるようになった点だ。11acでは下り方向しかMU-MIMOを使用できない。
利用する周波数帯も異なる。11acでは5GHz帯のみ利用するのに対し、Wi-Fi 6ではIEEE 802.11nと同様に2.4GHz帯と5GHz帯の両方を利用する(図3)。
2.4GHz帯には1~13のチャネルがあるが、チャネル同士が5MHzしか離れていない。無線LANの20MHz幅を確保しながら干渉を避けるには、1/6/11chや2/7/12chのように一定間隔を空けたチャネルを利用する必要がある。5GHz帯はそれぞれ十分なチャネル幅を確保している。