Wi-Fi 6のAP2台を同じ机の上に置いたとき、両者間のリンク速度が極端に低下する現象が確認された。機器の間隔を空けると、その現象は解消される。距離が近すぎると、リンク速度が低下することがあるようだ。親機と子機の距離と通信速度の関係について見てみよう。
距離を変えてリンク速度を確認
リンク速度とは、ネットワーク機器同士が情報を交換して決める最大通信速度だ。無線LANでは、機器の処理能力や電波状況によって変わる。
理論値なので、スループットとは異なるが、リンク速度が速いほど快適に通信できる可能性が高くなる。逆に遅いと通信状態が不安定になる危険性が高まる。
2台のWi-Fi 6対応APを使って、一方を親機、もう一方を子機として実験を実施した(図8)。利用したエイスースジャパンの機器は、仕様上の最大通信速度は4804Mビット/秒である。電波の条件が良いほど、リンク速度はこの数値に近づくはずだ。実験は、壁の間が6m弱の部屋の中で実施した。
近づきすぎると速度が低下
AP間の距離を変えながらリンク速度がどう変化するかを調べた結果を表4に示す。表中の受信リンク速度と送信リンク速度、信号強度は、いずれも子機側のパソコンのログに記録された値である。
結果を見ると、アクセスポイントの間隔が0.2~5mまでの送受信でリンク速度が3000Mビット/秒を超えた(図9)。ただ0.1mになると、リンク速度が落ち、0.05m(5cm)では受信速度が6Mビット/秒と極端に落ち込んだ。表4の信号強度を見ても、0.2~0.5mより0.05mや1mのほうが信号強度が低下していた。
また距離が4m以上の場合には、リンク速度が急激に不安定になり、大きく上下した。
特に5mでは、受信速度がそれより近距離のときよりも速くなっていた。今回の実験環境では、距離を離すとAPが部屋の壁にかなり近づいた。このため、壁による電波の反射がリンク速度に影響を与えたのかもしれない。
参考までに、一方のAPを部屋の外に持ち出し、壁越しに6m以上を離した場合のリンク速度も測定した。その結果、距離が遠くなるほど、信号強度は弱くなりリンク速度が低下することを確認できた。
途中に壁があっても、リンク速度は1000Mビット/秒を超えており、通常の利用では問題ないと考えられる。