Wi-Fi 6対応製品を使った今回の実験で、いくつかのトラブルに遭遇した。最後に、今回の実験で見えてきた問題点を紹介しよう。
ドライバーやツールが未対応
最大の問題点は、Wi-Fi 6は登場したばかりなのでドライバーソフトや電波可視化などのツールが対応していない点だ。ドライバーやツールが対応していないと電波状況などを正確に把握できないので、トラブル対応に使えない。
例えば、今回の実験で使ったノートパソコンの無線LANアダプター▼は、デバイスドライバーのバージョンを上げないと、Wi-Fi 6の電波を捕捉できなかった。他の無線LANアダプターでも、同様の現象が起こる可能性がある。
ツールも一部対応していないようだった。例えば、inSSIDerでWi-Fi 6の電波をモニタリングした際、適切に表示されないことがあった(図11)。2.4GHz帯の場合、APの設定が40MHz幅だったが、inSSIDerでは20MHz幅と表示された。
一方、5GHz帯ではAPで160MHz幅を設定していたが、inSSIDerの画面では、106chを中心にした80MHz幅と表示された。利用した無線LANアダプターは、11acの80MHz幅までしか対応していない。このため、160MHz幅で動作しているのに80MHz幅と表示した可能性がある。ただ、116~132chを別のAPで使用していたため、本当に80MHz幅で運用していた可能性もある。どちらの解釈が正しいかは、ツールだけでは判断できない。
5GHz帯はDFSの動作に注意
5GHz帯の電波、特にW53とW56の周波数帯については、気象レーダーなどの各種レーダーも利用している(図12)。このため、これらの周波数を使う無線機器にはDFS▼と呼ばれる機能を実装することが義務付けられている。
DFSを搭載したAPは、自分が利用したいチャネルについて、レーダー波が観測されないことを1分間確認してから電波を出す。利用中もレーダー波を常にモニターしており、検知した場合は即座にその電波の利用をやめるようになっている(図13)。
その後は空いているチャネルを探して通信を再開するが、その場合事前に1分間レーダー波が検知されないことを確認してから利用する。つまり、DFSが動作すると最低でも1分間▼は通信が途切れてしまう。
ちなみに、移動先としてレーダー波が使わないW52を選んだ場合は、この1分間の確認動作は必要ない。このため、DFSが動作したときはW52に移動する実装も多い。だが、W52はW53やW56より混雑していることが多く、スループットが上がらない場合がある。
80MHz幅や160MHz幅といった広い帯域を利用すればするほど、レーダー波を検知してDFSが動作する確率が高まる。そのため、意図しないチャネル変更や、160MHz幅の設定でも80MHz幅しか使用できないといったトラブルにつながりやすい。