基本的な仕組みは長年変わらないネットワークスイッチだが、付加機能は進化し続けている。ネットワーク機器各社が機能強化に注力している分野を2つ紹介する。
1つは、LANケーブルを使ってデータ信号とともに電力を送る「PoE▼」だ。PoE対応のスイッチはPoEスイッチなどと呼ばれる。各社は、大容量の給電が可能な最新規格のPoEに対応するスイッチを続々と製品化している。
フリーアドレスで増す給電需要
各社がPoEスイッチの開発に力を入れる背景には、フリーアドレスの導入などにより、多くの企業が無線LANを主体にしたネットワークを構築するようになっていることがある。
無線LANを構築する際は、無線LANアクセスポイント(AP)をオフィスの各所に設置する。このとき、APの電源の確保が課題になりやすい。解決策として、PoEスイッチのニーズが高まっている。PoEスイッチは通常のL2スイッチと同様に、交流電源に接続する。そこから得た電力を直流電源に変換し、PoEスイッチとLANケーブルでつながるネットワーク機器に電力を送り届ける(図3-1)。
最大給電電力は約6倍に
PoEの最初の規格は2003年に策定されたIEEE 802.3afである。最大給電電力は15.4Wだ。当初は主にIP電話機に使われたが、電源ケーブルの取り回しが不要になる利便性は大きく、APやネットワークカメラなどにも用途が広がった。
接続する機器の種類が増えるにつれて、PoEの給電能力を拡大するニーズが高まった。特にAPは、規格の高速化の影響で消費電力が増えていった。
2008年には最大給電電力を30Wと約2倍に引き上げたIEEE 802.3atが策定された。しかし近年は、IEEE 802.3atでも給電電力が不足するようになった。最新の無線LAN規格IEEE 802.11axに対応するAPは、消費電力が30Wを超える製品も出ている。
そこで2018年、さらに大きい電力を供給できるIEEE 802.3btが策定された(図3-2)。IEEE 802.3afや同atがLANケーブルの2対のより対線で電力を送るのに対し、4対のより対線を使うことで最大給電電力を90Wに増やした。IEEE 802.3afの約6倍だ。無線LANの進化との相乗効果で、スイッチも付加機能を進化させたわけだ。