ネットワークの構築や運用管理には、やってはいけない「禁じ手」がある。ネットワークをトラブルなく構築・運用するためには、当然のことながら禁じ手を避けることが重要だ。
だが容易ではない。一見まっとうに思える禁じ手が少なくないからだ。ネットワークは様々な技術の集合体なので、一般的な常識が通用しないことがあるのだ。
そこで本連載では、様々な企業のネットワークを構築してきた筆者の経験を基に、ネットワーク構築・運用における禁じ手を解説する。
今回は無線アクセスポイント(AP)の設置台数を取り上げる。APは多数設置すればするほどつながりやすく、かつ通信速度が高くなりそうだ。だが実際は異なる。適切な台数以上を設置すると、通信品質はかえって低下する。その理由と適切な台数の決め方を解説する。
余裕の持たせすぎがあだに
まずはどういった場合にAPの台数が過剰になるか考えてみよう。APの導入時には、「余裕の持たせすぎ」が台数の過剰につながることが多い(図1)。例えば、導入するAPの推奨接続台数が「12~40台程度」と書かれていたとする。この場合、余裕を見て「端末12台にAPを1台用意する」とすると、筆者の経験上、APの台数はほとんどの場合過剰になる。
使用する端末を多く見積もることも、APの台数過剰に拍車をかける。例えば社員が100人のオフィスを想定する。社員によってはパソコン、スマホ、タブレットの3台を無線LANにつなげている。そこで全社員が3台同時に接続しても問題ないようにAPを用意しようとすると過剰になる。前述のように端末12台に1台のAPを用意すると、100人のオフィスにAPを25台設置することになる。明らかに過剰であることが分かってもらえるだろう。
無線LANの運用開始後にAPの台数が過剰になる場合もある。その一例がトラブルシューティングのときである。通信が遅くなるなどのトラブルが発生した際、実際には別の原因であるにもかかわらず「AP不足」を疑ってAPを増やすケースは少なくない。するとAPの台数が過剰になり、通信品質はかえって低下してしまう。