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 企業ネットワークの要の1つであるルーター。新規にネットワークを敷設する場合は購入する必要がある。また、トラフィックの増大などに対応するために、高性能の機器に置き換えることもある。

 だが、すぐに使い始めてはいけない。機器の購入や使用の前には事前検証が不可欠だからだ。導入予定の機器が、自社のネットワークで想定通り動作するか確認する必要がある。

 そこで今回は、ルーターをすぐに使い始めてはいけない理由および事前検証の重要性を解説する。

想定した転送速度が出ない

 事前検証せずにルーターを使い始めた際に発生する代表的なトラブルの1つが、「カタログに記載された性能が出ない」である。メーカーがスペックを算出した際の条件が、実環境と異なる場合に顕著になる。

 代表例の1つが最大転送速度である(図1)。メーカーによっては、パケットのサイズを固定して転送速度を算出する。

図1●条件によって転送速度は変わる
図1●条件によって転送速度は変わる
メーカーが公表するスペックは算出条件が実環境と異なる場合があるのでうのみにはできない。例えばメーカーがパケットサイズを固定させて転送速度を算出している場合、パケットサイズが変動する実環境ではその転送速度を実現できない。
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 だが実際の使用環境ではパケットサイズは変動する。スペック算出時のパケットよりも小さいサイズのパケット(ショートパケット)が含まれることも多い。ショートパケットが含まれると、ルーターの処理性能(パケットの処理速度)が同じでも、転送速度は低くなる。つまり、スペック通りの転送速度が出ないということになる。

 パケットサイズ以外にも、転送速度を低下させる要因がある。付加機能の利用の有無だ。

 例えばIPsecやDPIといった付加機能は負荷が高いので、ルーターの転送速度に影響を与える。これらの機能を有効にした場合と無効にした場合では、転送速度は大きく変わってくる。つまり、これらの機能をすべて無効にして算出された転送速度を、機能を有効にした実環境で実現するのは難しい。

 以上のように、カタログ上では要求スペックを満たしていても、実環境で実現されるとは限らない。このため実環境を想定した事前検証が欠かせない。