テレワークを採用する企業が増えている。テレワーク時には、従業員は多くの場合自宅からVPN▼経由で社内システムに接続したり、Web会議システムでミーティングに参加したりすることになる。
そこで問題になるのが従業員の自宅のインターネット接続回線である。自宅のインターネット接続回線は企業の管理外であり、通常は従業員が個別に契約している。このためインターネット接続環境は個人差がある。
また、無線LANルーターや端末などを適宜見直す利用者であっても、インターネット接続回線は1度契約してしまうと見直さないケースが多い。買い替えるだけで済む機器に比べて、契約変更は面倒だと感じるのだろう。
だが、テレワーク環境下では従業員宅のインターネット接続回線は企業ネットワークの一部といえる。通信速度が不十分だと業務効率に影響を与える。テレワークの普及により、自宅のインターネット接続回線の重要度が増しているのだ。
そこで今回は、個人向けのインターネット接続回線に着目して、基本的な仕組みや速度低下の原因を解説する。
ベストエフォート型が大半
まず、回線の契約体系を整理しよう。インターネット回線の契約は、ベストエフォート型と帯域保証型の2つに分類される。
ベストエフォート型はその名が示すように、提示される通信速度は理論上の最大値で、「最善の努力」の範囲でサービスを提供する。利用者一人ひとりの通信速度、すなわち帯域を保証してくれるわけではない。このため回線の負荷が高まった場合には通信速度は低下してしまう。半面、比較的安価に利用できる。
一方の帯域保証型は文字通り利用者の帯域が保証される。そのため、ベストエフォート型のような通信速度の増減がなく、安定した通信が期待できる。
個人向けのインターネット接続サービスでは、通信の安定性よりも料金が重視される。このためベストエフォート型であることがほとんどだ。回線の混雑具合により、業務利用が難しくなるほどに通信速度が低下する可能性がある。
トラフィックは増加傾向
続いて回線の混雑状況の変化を見てみよう。テレワークに加えて学校や塾の遠隔授業などの普及も進んでいるため、インターネット接続回線のトラフィック量が非常に増加している。
NTT東日本による▼と、2021年3月および4月の平日の昼間におけるトラフィック量が、2020年2月末に比べて60%以上も増加しているという(図1)。トラフィックが増加すると、ベストエフォート型のインターネット接続回線では十分な帯域を確保できず、Web会議中に音声や画像が途切れるといった品質低下に悩まされることになる。