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 企業内で通信が閉じていた時代は終わった。今やクラウドサービスなしでは業務を継続できない時代に突入した。その結果、これまでとは通信の流れが大きく変わる。特に影響が大きいのがWANだ。今回はこうした時代に適したWANの活用法を紹介しよう。

中央集中型の課題

 1990年代後半以降、企業システムの主要なサーバー(オンプレミスサーバー)などはデータセンターに収容するのが一般的になっている。このためネットワーク構成はデータセンターを中心とした中央集中型が主流である。

 中央集中型のネットワーク構成では、インターネットとやりとりするトラフィックはデータセンターを経由する。このためセキュリティー機器をデータセンターに配置すれば、一元的に管理できる(図1)。

図1●中央集中型ネットワークの例
図1●中央集中型ネットワークの例
データセンターなどで通信を一元的に管理する。クラウドサービスとの通信が増えるとネットワーク機器の負荷が増大し、通信速度の低下や遅延が発生する懸念がある。
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 しかしインターネットとやりとりするトラフィックが増えると、データセンターとの接続回線やネットワーク機器などの負荷が高くなる。トラフィックの遅延やパケットロスが発生する懸念が出てくる。例えばビデオ会議では、映像や音声の途切れや遅延などが発生して会議の妨げになる場合がある。

SD-WANで一元管理

 そこで現在注目されているのがSD-WANだ。SD-WANとは、拠点などをつなぐWANの構成をソフトウエアを使って動的に変更して最適化する技術のこと。SD-WANを使えば柔軟なWANの運用や管理が可能になる。

 SD-WANのメリットの1つは各拠点のルーターを一元管理できること(図2)。一般的なWANに使われるルーターは、ネットワーク管理者がCLIを操作して手作業で設定する。このためルーターの台数が多いと手間がかかる。またネットワーク管理者がいない拠点では、他の拠点から管理者に来てもらう必要がある。

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図2●SD-WANで一元管理
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図2●SD-WANで一元管理
従来のWANでは各拠点に設置するルーターを個別に設定する。SD-WANなら各拠点のルーターをクラウドなどに設置したコントローラーから一元管理できる。

 一方SD-WANでは、クラウドなどに設置したコントローラーからリモートで設定できる。このため設定の手間を大いに省ける。各ルーターを流れるトラフィックを監視することなども可能だ。

 一般的なルーターの機能は、パケットを転送するデータプレーンと、設定や管理を担う制御プレーンに分けられる。SD-WANではルーターはデータプレーンとしてのみ動作。制御はコントローラーの管理プレーンが受け持つ。