クラウドサービスの利用が拡大している。総務省の「令和元年通信利用動向調査の結果▼」によると、2019年にクラウドサービスを「全社的に利用している」「一部の事業所または部門で利用している」とする企業の割合が64.7%と初めて6割を超えた。2018年の58.7%に比べ6ポイントも伸びている。
さらに昨今の新型コロナウイルスの影響で、多くの企業がテレワークの導入を進めている。クラウドサービス利用の流れは今後も加速していくだろう。
しかしその結果、クラウドサービスが何らかの要因で利用不能になったり、体感速度が低下したりするとビジネスにも影響が及ぶ。
その原因はクラウドサービス側だけでなく、企業ネットワーク側にあるケースもある。今回は、クラウドサービスの活用において重要だが盲点となりがちな「ネットワーク品質の可視化」について解説する。
ネットワーク品質が体感を左右
クラウドサービスには一般にインターネットを介してアクセスする。本社や支店といった拠点で働く従業員の視点からすると、利用するネットワークは次のような経路になる。まず拠点LANからWAN▼を経由してデータセンターに接続。そこからセキュリティー機器などを介してインターネットにつながり、ようやくクラウドサービスに到達する。
クラウドサービスの反応が悪くなると、クラウドサービスに原因があると考えがちだ。しかし経路のどこかでネットワークの品質が悪化すると、使いたいクラウドサービスそのものに問題がなくても、応答時間が長くなったり利用できなくなったりする。
したがって各拠点やプライベートクラウド(データセンター)を接続するLAN/WANのような社内ネットワークの品質だけでなく、SaaS▼やIaaS▼などのクラウドサービスにアクセスする社外ネットワーク(インターネット)の品質も重要なのである。インターネットの通信状況の可視化は従来は難しかったが、最近では詳細を把握できる製品やサービスが登場し始めている。
つまりインターネットの区間を含む、従業員とクラウドサービスをつなぐネットワークすべてを「ネットワーク品質の可視化」の対象とする。これがトラブルの迅速な解決につながる。
社内と社外で分けて考える
ネットワークの品質を可視化する際には、ネットワークを分割して考えるのがポイントだ(図1)。具体的には社内ネットワークと社外ネットワークに分けて可視化する。自社の責任範囲かどうかによって、通信品質を可視化する手法やトラブルシューティングの手法が異なるためである。
ネットワークを分割して可視化すると「クラウドサービスが遅い・つながらない」といった障害が発生した際に、原因が社内なのか社外なのか明確に切り分けられる。社内ネットワークの品質悪化が原因であれば、自力で対処する必要がある。社外ネットワークやクラウドサービス側が原因であれば「自社のネットワークは問題ない」という前提で、トラブル内容などをサービス事業者に報告し対処を依頼する。
従来はトラブルの原因や影響範囲が不明確なまま、経験則に基づいて調査し対処するのが一般的だった。ネットワークを分割して可視化することで、トラブル解消の糸口をいち早くつかめるようになる。