全4323文字
PR

 私たちが暮らす空間には、多くの電波が飛び交っている。船舶や飛行機の通信、アマチュア無線やラジオ放送など用途は様々だ。国や地域が異なっても、使用する電波の周波数帯は用途ごとにほぼ同じである。用途に適した周波数帯を割り当てているからだ。

 日本では総務省が周波数帯を割り当てている。許可制による電波の運用は、電波法の前身である無線電信法(1915年施行)で既に実施されていた。

 テレビの地上放送がアナログ方式だった時代には、VHFやUHFという用語が使われていた。VHFは超短波を意味し、30MHzから300MHzまでの周波数帯を指す。UHFは極超短波を意味し、300MHzから3GHzまでの周波数帯を指す。

 無線LANが利用している2.4GHz帯はUHFに相当し、アマチュア無線、Bluetooth、RFIDなども利用している。また、無線通信ではないが電子レンジも2.4GHz帯を利用する。このため、漏れた電磁波が無線LANに悪影響を与える。

 日本では5GHz帯も無線LAN以外に使われている。有名なのが気象レーダーだ。無線LANアクセスポイントは、気象レーダーの電波を検知するとチャネルを明け渡すDFSという機能が必須になっている。

 このように無線LANが利用している2.4GHz帯や5GHz帯は、他の用途でも使われているため混み合っている。この状況を緩和すべく、他の周波数帯を使う無線通信の実用化が進んでいる。

 そこで今回は、いわゆる「サブギガ帯」と呼ばれる920MHz帯の周波数の無線通信を取り上げる。日本では2012年に920MHz帯を利用できるようになった。

 サブギガ帯の無線通信は、我々の目に付かない身近な場所で意外に使われている。電気・ガス・水道メーターの測定結果の送信、環境モニタリング、建物内の空調や照明などの各種通信制御だ。

 サブギガ帯がこうした用途に使われるのはいくつかの理由がある。まず、周波数が低いため、長距離の通信が可能でインフラ整備の費用を抑えられる点が挙げられる。また、サブギガ帯は大量のデータの通信には向かないが、前述のような用途であれば通信データが少ないため適している。

 サブギガ帯の利用が進むにつれて、様々な無線通信方式が登場している(表1)。ここで示した通信距離は、あくまで理論値をベースにした目安だ。実際には、設定や環境などによって通信距離は大きく変わってくる。この距離で必ず通信できることを保証するものではない。

表1●サブギガ帯の主な無線通信方式
一方向通信の方式は除外した。それぞれ一長一短があり、単純には優劣をつけられない。送りたいデータの容量、通信距離などを考慮して選択する必要がある。
表1●サブギガ帯の主な無線通信方式
[画像のクリックで拡大表示]

 なお、日本で920MHz帯を利用する際には、「920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備(ARIB STD-T108)」という標準規格に従う必要がある。この規格では、利用可能な周波数帯や偏差が決められており、出力電力も細かくクラス分けされている。