数年前、筆者がある競技場で無料の無線LANサービスを利用していたときのことだ。観客が少ないうちは無線LANを快適に利用できていたが、競技開始時刻が近づいて観客が増えるに従って電波の受信状況が悪くなり、しまいにはWi-Fiピクト▼が1本になってしまった。座っている位置は変えなかったので、変わったことといえば、周囲に人が増えたことだけである。人の存在が無線LANの電波状況に影響するのだろうか。そこで今回は、人が無線LANに与える影響について調べた。
「人の壁」による減衰を測定
人が電波に与える影響として考えられることの1つが電波の減衰である。人によって電波がどのくらい減衰するかを調べるために、三井情報のラボである「MKI IDEA Lab.」で実験してみた。
実験では、無線LANのアクセスポイント(AP)と測定器(テスター)の間に、遮蔽物として人に立ってもらい、電波強度を測定した(図1)。APには米シスコシステムズのAironet 3802i、測定器(テスター)には米ネットスカウトのAirCheck Wi-Fiテスターを利用した。Aironet 3802iが発する電波をAirCheck Wi-Fiテスターで受信し、その電波強度を測定した。具体的には、APが定期的に送信しているビーコン▼を5m離れた場所の測定器で受信して、その電波強度を測定した。
APのSSID▼は「site-survey」に設定。2.4GHz帯は6チャネル、5GHz帯は36チャネルを利用した。通常、APは天井などの高い場所に設置する。しかし今回は、人体による電波の減衰を調べるのが目的なので、約1mの高さに設置した。
APと測定器の間に何もない状態で電波強度を測定したところ、2.4GHz帯は-45dBm▼、5GHz帯は-48dBmだった(図2)。APと測定器の距離はレーザー距離計で測った。
次に、ラボで作業をしていた同僚に、APと測定器の間に並んでもらった(図3)。その状況で電波強度を測定したところ、2.4GHz帯は-52dBm、5GHz帯は-53dBmだった(図4)。2.4GHz帯は7dB、5GHz帯は5dB低下したことになる。