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 総務省は2018年8月、「電気通信事業分野における市場検証(平成29年度)年次レポート」を公表した。政策の立案や制度の見直しなどに役立てるため、毎年実施しているものだ。260ページ以上に及ぶ年次レポートから、3回にわたって注目ポイントを紹介する。第1回は格安スマホの動向を見ていく。

 総務省によると、移動体通信事業者(MNO)から回線を借りて独自ブランドでサービスを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)の契約数は、2018年3月末時点で前年同期比16.0%増の1840万件。このうち、格安スマホに相当するSIMカード型は1130万件。前年同期比26.8%増となったが、同48.7%増を記録した2016年度よりも勢いは鈍化した(図1)。

図1●MVNOサービスの区分別契約数の推移
図1●MVNOサービスの区分別契約数の推移
総務省の資料に基づき作成。元の資料は電気通信事業報告規則に基づくMVNOからの報告による。契約数が3万以上のMVNOが対象である。
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 年間純増数はMNOが314万件に対し、MVNOは254万件。2015年度と2016年度はMVNOが上回っていたが、MNOが巻き返した(図2)。ただ総務省によると、MNOの純増数増加は通信モジュールの契約数が大幅に増えた影響が大きいという。

図2●MNOとMVNOの前年度末比純増数の推移
図2●MNOとMVNOの前年度末比純増数の推移
総務省の資料に基づき作成。元の資料は、電気通信事業報告規則に基づくMNOの報告による。
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 実際、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)の転出件数に対する転入件数の比率を見ると、MNOは転出が転入を上回る状況に変わりはない。勢いが鈍化しているとはいえ、依然としてMNOからMVNOへの乗り換えは続いている(図3)。

図3●携帯電話番号ポータビリティの転出件数に対する転入件数の比率
図3●携帯電話番号ポータビリティの転出件数に対する転入件数の比率
総務省の資料に基づき作成。元の資料はMNO3社の提出資料による。UQコミュニケーションズは番号割り当てを受けていないため、MVNOに含まれている。
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MVNO失速でドコモに異変

 数字を細かく分析すると、異変も見られる。MVNOへの回線提供ではNTTドコモが圧倒的な強さを誇るが、同社におけるMVNOの純増数は2017年度に大幅に減少したのだ。NTTドコモにおけるMVNOの純増数は2016年度が約206万件、2017年度が約135万件となり、3割以上も減った(図4)。

図4●携帯電話の契約数における事業者別シェアおよび市場集中度の推移
図4●携帯電話の契約数における事業者別シェアおよび市場集中度の推移
総務省の資料に基づき作成。元の資料は、電気通信事業報告規則に基づく報告による。KDDIグループには、KDDI、沖縄セルラー、UQコミュニケーションズが含まれる。ソフトバンクグループには、ソフトバンク、イー・アクセス、ワイモバイルが含まれる。HHIは市場の集中度を示すハーフィンダール・ハーシュマン指数。
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 一方、KDDIグループにおける2017年度のMVNOの純増数は約68万件(前年度比5%増)、ソフトバンクグループが約81万件(同80%増)。これらの数字に違和感があるかもしれないが、総務省はUQコミュニケーションズをMNOとして計上しており、UQ mobileはMVNOの純増数に入っていない。ソフトバンクは通信モジュールの影響が大きいとみられる。

 このため、上記の異変はNTTドコモが格安スマホの回線提供元として圧倒的なシェアを誇る分、同社だけが失速の影響をもろに受けたと見るのが妥当だろう。もっとも、MVNOの純増数が大幅に減ったとはいえ、「ユーザー当たりのトラフィックは拡大しているので、MVNOからの通信料収入は前年度に比べて増えた」(NTTドコモ幹部)としている。

▼MNO
Mobile Network Operatorの略。具体的には、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社。
▼MVNO
Mobile Virtual Network Operatorの略。
▼SIM
Subscriber Identity Moduleの略。
▼通信モジュール
スマートフォンのように人が直接利用するのではない機器に組み込むタイプのモジュールを指す。具体的には、エレベーターや自動販売機の遠隔監視、自動車のカーナビなどの機械同士の通信(M2M:Machine to Machine)、電力・ガス・水道の検針などで使われている。
▼MNP
Mobile Number Portabilityの略。