総務省が2018年8月に公開した「電気通信事業分野における市場検証(平成29年度)年次レポート」から、今回は携帯電話大手3社の動向を見ていく。
MVNO▼は勢いこそ鈍化したものの、契約数は依然として伸びている。大手3社は契約数シェアがじわじわと目減りする構図が続く。
2018年3月末時点の大手3社の契約数シェアは、NTTドコモが前年同期比1.5ポイント減の39.4%、KDDI(au)グループが同0.8ポイント増の27.9%、ソフトバンクグループが同0.4ポイント減の22.1%だった。KDDIグループは唯一シェアを伸ばしたが、UQコミュニケーションズの「UQmobile」(UQモバイル)がMVNOではなく、MNO▼としてカウントされている影響が大きい。
ただ、大手3社はあの手この手で乗り換えをうまく防いでいる。2018年度は一連の対策に効果が表れ、MVNOの勢いはさらに鈍化しそうな気配である。
満足度は低いが囲い込みが奏功
総務省の利用者アンケートによると、大手3社の料金に対する満足度は低い。「不満」と「非常に不満」の合計は37.0%。「満足」と「非常に満足」の合計は20.2%であり、不満が満足を大きく上回る(図1)。料金の満足度ではMVNOが合計77.0%、サブブランドが合計60.5%と大手3社を圧倒している。
それでもMVNOへの顧客流出が進まないのはなぜなのか。それは大手3社の囲い込み戦略が奏功しているためと考えられる。大手3社は最近、光回線だけでなく、電気やガス、保険なども提供し始めた。総務省が行き過ぎた端末購入補助を禁止すると、今度は浮いた費用をポイント還元に振り向けた。さらにそのポイントを自社のネット通販サイトなどに還流させることで、楽天のようにポイントを軸にした「経済圏」を確立しようとしている。特にNTTドコモは同社のポイントサービス「dポイント」の拡大に躍起になっている。
MMD研究所が2018年7月に開いた「MVNO勉強会」で、格安スマホに興味があるという一般ユーザーから、こんな声が聞こえてきた。「格安スマホで料金が安くなるのは理解している。だが現在の大手との契約をやめたときのデメリットがわからない。何か不利益があるのかと思うと、乗り換えに踏み込めない」。
大手3社は長期契約による割引を打ち出しているほか、今ではクレジットカードも発行しており、乗り換えは通信だけの問題ではなくなってきている。囲い込み戦略が効いている印象だ。
こうした兆候を裏付ける調査結果がある。公正取引委員会が大手3社(Y!mobileを除く)の利用者2000人を対象に実施したアンケートだ。格安スマホを想定した他社への乗り換え意向を聞くと、「通信料金や通信品質にかかわらず、乗り換えるつもりはない」が49.6%とほぼ半数を占めた(図2)。
理由(複数回答)は「現在の契約プランに問題がないから」(50.0%)と「調べることが面倒だから」(29.0%)が上位を占めている(図3)。加えて、家族契約やセット割引の存在、乗り換えリスクを挙げる声も目立つ。契約期間が10年以上という回答は55.2%と過半数に達しており、契約の長期化がここまで進むと、今さら切り崩すのは容易ではない。