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 テレワークで自宅からビデオ会議に参加する場合、パソコンやスマートフォンといった端末のほとんどはNATが働くルーターの配下にある。このため、ビデオ会議に参加する端末同士が音声や動画をやりとりするにはNATを越えて通信をする、いわゆる「NAT越え」の仕組みが必要になる。

NATを越える2つの方法

 通常、ビデオ会議で音声や動画をやりとりする通信にはUDPが使われる。TCPはACKの応答などで遅延が発生するので、音声や動画のやりとりに用いられることはほとんどない。

 こうしたUDPの通信でNAT越えを実現するのが「STUN」および「TURN」と呼ばれる技術だ(図2-1)。STUNは端末同士がP2P通信するための技術。NATの種類を検知し、NATを越えて通信する仕組みを提供する。TURNは、STUNでは通信できないNATで使われる技術である。端末同士は直接通信せず、リレーサーバー経由で通信する。

図2-1●NATを越えて通信するための2つの方法
図2-1●NATを越えて通信するための2つの方法
NAT配下にある端末同士がビデオ会議に参加する場合、NATを越える手段が必要になる。1つはSTUNなどを用いてP2P通信する方法。もう1つはTURNなどを使ってリレーサーバーで通信を中継する方法だ。
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 これらの2つの技術を組み合わせて端末間で通信を確立する技術として「ICE」がある。

ビデオ会議によって方法が異なる

 Part1で挙げた主要なビデオ会議サービスについて、P2P通信かリレーサーバー経由の通信か、どちらの通信方法を採用しているのかを調査した(表2-1)。リレーサーバーは、すべてのサービスが利用している。一方、P2P通信ができるのは筆者が確認した限り、Zoomミーティング、Skype、Microsoft Teams、Wherebyのみだった。

表2-1●主なビデオ会議サービスにおけるNAT越え通信の方法
各アプリが採用しているNAT越えの方法を挙げた。
表2-1●主なビデオ会議サービスにおけるNAT越え通信の方法
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 リレーサーバーを使う方法は、端末やWebブラウザーの負荷が軽減される、クラウド上で録画機能が使えるといった利点がある。逆にP2P通信の場合はサーバーが不要なので低コストでサービスを提供できるというメリットがある。

 どちらも一長一短だが、最近のトレンドはリレーサーバーを使う方法に移ってきている。筆者がVoIP関連の開発を手掛けていた10年以上前はサーバーの性能が今ほど高くはなく、サーバーを使わないP2Pのほうが音声や動画の通信に適していると考えていた。しかし今は大量のサーバーを管理できるクラウドや、10Gビット/秒クラスの通信が可能な高性能サーバーが使えるので、リレーサーバーでもサービスの品質を確保できるようになったことも大きいと考えられる。