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 2022年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、世界に大きな混乱を引き起こしている。サイバー空間、そしてランサムウエア攻撃グループの周辺も例外ではない。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって間もない2022年2月26日午前1時20分(日本時間)ごろ、ランサムウエア攻撃グループの中でも1、2を争う勢力を持つ「Conti」が、自身のダークウェブで声明を掲載した。

 Contiの声明には「ロシア政府を全面的に支持する。もし誰かがロシアに対してサイバー攻撃や戦争行為をしようとした場合、我々は可能な限りのリソースを使って敵の重要インフラへ反撃する」と記載されていた。

 しかし、掲載から約3時間後には一転して「我々はいかなる政府とも手を結んでおらず、現在行われている戦争を非難する」などと主張する内容に書き換えられた。ロシアを支持する強気の文言が削除され、トーンを落とした表現に変更された。だが最初の声明のインパクトは大きく、ゴタゴタを引き起こすきっかけとなった。

声明が引き金で内部データ流出

 Contiの声明が掲載されてから数日後、何者かがContiの内部データをSNS上で暴露した。「ContiLeaks」と名乗る人物で、ウクライナを支持すると主張している。

 筆者は暴露された内部データを細かく分析した。今回は、そこから分かったContiランサム攻撃グループの組織構造や内情を解説する。

 暴露されたデータには、Contiが使用し管理していた各種マルウエアに関連するファイルや、内部システムに関わるスクリーンショット、組織内で交わされたチャットのログが多数含まれていた(図1)。

図1●暴露されたContiの内部データ
図1●暴露されたContiの内部データ
「ContiLeaks」と名乗る人物がContiの重要な内部データを暴露した。また「TrickbotLeaks」と名乗る人物も、Trickbot(Conti)のメンバーのものであるとする個人情報やチャットの内容を暴露した。
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 さらにTrickbotLeaksと名乗る別のアカウントもSNSに出現した。真偽は不明だが、Trickbotメンバーの個人情報やチャットログを暴露した。中には、セキュリティー企業の研究開発部門に勤務する表の顔を持つ人物も入っていた。

 Contiは最近、Trickbotのグループを吸収した。つまり、実質的にTrickbotのメンバーはContiの傘下にある。TrickbotLeaksによる暴露も、Contiの声明が引き金となった可能性が高い。

 ContiLeaksが暴露したデータの中には、Contiランサムウエアのソースコードとみられるファイルも含まれていた。筆者が2021年に行った解析の結果と比較すると、処理が全体的に一致していた(図2)。

図2●暴露されたソースコードと以前の解析結果を比較
図2●暴露されたソースコードと以前の解析結果を比較
筆者が過去にContiのランサムウエアを解析した結果と比較すると、処理が全体的に一致していた。このことから暴露されたソースコードは本物である可能性が高い。
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 このため、本物のソースコードとみて間違いない。今回の暴露はContiにとって想定外だった可能性が高い。