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 LPWAは、身の回りにあるあらゆるモノをインターネットに接続するIoTに使われる無線通信技術だ。例えば、自動車や家電、時計、環境測定センサーなど、様々なデバイスがインターネットにつながり、情報をやりとりする。

 IoTデバイスの接続には、無線がよく使われる。電波が届く範囲であれば、デバイスを任意の場所に設置できるからだ。場所を固定せず動き回る機器にも使える。こうした無線技術は多数存在するが、その中でも製造業や流通サービス業、社会インフラといった産業向けの用途で有望視されているのがLPWAだ(図1-1)。

図1-1●産業向けIoTにおける無線通信技術として注目
図1-1●産業向けIoTにおける無線通信技術として注目
LPWAはIoT機器をインターネットにつなぐ無線通信技術だ。他の技術に比べて通信速度は遅いが、通信距離や消費電力、コスト面で有利とされている。こうした特性を生かして産業向けの活用が見込まれている。
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 LPWAは2017年に盛り上がりを見せた後、ブームがいったん沈静化した。それがここにきて、新規格の実用化やサービス化が再び盛んになっている。例えば、ソニーネットワークコミュニケーションズが、ソニー独自のLPWA規格「ELTRES」によるIoTネットワークの商用サービスを2019年に開始。2021年11月には、無線LAN機器の認証などを実施している業界団体「Wi-Fiアライアンス」がLPWAのWi-Fi版である「Wi-Fi HaLow」の認証プログラムを開始した。そこで本特集では、LPWAの最新動向や技術の詳細を解説する。

遅くても遠くまで飛ぶ

 IoTデバイスを接続する無線技術として、真っ先に思いつくのが無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothだろう。しかし、Wi-FiやBluetoothは電波が遠くまで届かない。通信距離はせいぜい数十~数百メートル程度だ。このため、無線LANアクセスポイント(AP)などから離れてしまうと使えない。広い場所を移動する機器にも使えない。

 電波を遠くまで飛ばす用途には、4G(第4世代移動通信システム)や5G(第5世代移動通信システム)といった携帯通信技術しかなかった。だが、4G/5Gはコストが高い。安くても1台につき数千円の無線モジュールが必要で、月額数百円程度の通信料金もかかる。大量のIoTデバイスを接続する用途だと、採算が取れないことがある。

 そこでもう1つの選択肢として浮上したのがLPWAである。遠距離の通信や低消費電力での利用が可能な技術だ。コストも低い。無線モジュールが1台数百円から、通信料金は年額数百円程度。規格によっては無料で利用できる。

 半面、通信速度は遅い。しかしIoTでは、高速のデータ通信を必要としない用途も多い。例えば、定期的にIoTデバイスの稼働情報を収集したり、環境測定センサーで温度や湿度を計測したりする場合では、数Gビット/秒のような速い回線は必要ない。用途によっては数十~数百ビット/秒程度で十分なケースもある。

 電池駆動で長時間稼働できる省電力性能は、電源ケーブルの敷設が難しい屋外の大規模な施設や、人里から離れた山間部などで使用する場合に有用だ。LPWAは、こうした「遅くてもいいから低コストでかつ遠くまで飛ばしたい」という需要から生まれた無線通信技術だ(図1-2)。従来技術ではカバーしづらかった「隙間」を埋める形での活用が見込まれている。

図1-2●無線技術におけるLPWAの位置付け
図1-2●無線技術におけるLPWAの位置付け
無線LANや4G/5Gに代表される多くの無線技術が高速化に向けて進化を続けてきた。しかしIoTでは、サイズが小さいセンサーデータなどを遠くまで飛ばしたいケースもある。LPWAはこうした需要から生まれた無線通信技術だ。
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