Wi-Fi 6Eは、無線LANの業界団体であるWi-Fi Allianceが2020年1月に発表した新しい仕様である。「6GHz帯で機能するWi-Fi 6デバイスのブランド名」と定義されている。
IEEE▼における規格名はWi-Fi6と同じIEEE 802.11ax(以下、802.11ax)である。そのため802.11axで規定されている最大伝送速度(9.6Gビット/秒)や、複数端末で使う場合における電波の利用効率を高めるOFDMA▼の採用といった特徴はWi-Fi 6と同じだ。違いは、Wi-Fi 6Eが6GHz帯を使えることである(表1-1)。
ただし米国や韓国といった一部の国・地域では6GHz帯が使用できるが、日本国内では使用できない(2021年12月時点)。無線LAN向けに使用が認められているのは2.4GHz帯と5GHz帯だけである。
チャネル数が大幅増の可能性
Wi-Fi 6Eには2つの注目ポイントがある。その1つは、6GHz帯の周波数幅とチャネル数だ。
5GHz帯と6GHz帯では周波数の幅とチャネル数が大きく変わると予想される。日本国内において、5GHz帯で使える周波数は5150M~5350MHzと5470M~5730MHzだ。これに対して6GHz帯は5925M~7125MHzとはるかに大きな幅で検討が進んでいる。
日本国内における6GHz帯で使用可能な周波数とチャネル数は未定である。
ただIEEE標準で規定された想定チャネル配置を見ると、5925M~7125MHzで使用可能なチャネル数は20MHz幅の場合で59になる(図1-1)。5GHz帯のチャネル数は日本の場合20である点を考えると約3倍になる。これが無線LAN用として追加される可能性がある。
チャネル数が増えることで、高速通信をしやすくなるというメリットが期待できる。802.11axには20MHz幅の電波を最大8個まで束ねて使う仕組みがあるからだ。広い周波数を使うほど通信速度が高くなる。
日本における5GHz帯の場合、1チャネルを80MHz幅で使う際に用意できるチャネル数は最大5つ。対して6GHz帯は、最大限使えるようになったとしたら14チャネルになる。160MHz幅で使う場合についても同様で、6GHz帯なら最大7チャネルとなる。
クアルコムジャパンは「現在5GHz帯では最大160MHzのチャネルを使用できるが、チャネル数が限られているためほとんど80MHzで運用されている。6GHz帯では使用可能なチャネルが増えることで、160MHzのチャネルを使用できる頻度が増え、大幅な通信速度向上が期待できる」と指摘する。