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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 家庭などからの一般ごみを処理する施設「廃棄物(ごみ)発電プラント」で、新種の力覚フィードバック技術が活躍している。

 プラントの炉内で発生する物質の“こびりつき”をそぎ落とす作業に、遠隔操作ロボットを適用。バイラテラル制御(マスター・スレーブ制御)により、こびりつきからの反力をスタッフがリアルに感じられるようにした(図1)。「ハプティクス技術」とも呼ばれるもので、手応えを感じながら操作できるため、遠隔でも円滑に作業を実施できる。

 従来は現場の炉の前で防護具をつけながら1日2時間以上、人力でこの作業をしており、重労働だったが、ロボットの導入によりクリーンな中央操作室から軽装で作業できるようになり、スタッフの負担を大幅に軽減できた。香川県さぬき市にある「香川東部溶融クリーンセンター」で2021年から稼働している(図2)。

図1 廃棄物発電プラントでハプティクス技術
図1 廃棄物発電プラントでハプティクス技術
溶融炉でのこびりつきを解消する作業に、6軸ロボットアームと力覚フィードバック技術を利用している。中央操作室から力覚を基に遠隔操作する。
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ロボット導入以前に人間が作業していた様子
ロボット導入以前に人間が作業していた様子
防護用のヘルメットや手袋などを着用し、人間が押して作業していた。(写真:日鉄エンジニアリング)
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図2 香川県にある廃棄物発電プラントで稼働
図2 香川県にある廃棄物発電プラントで稼働
香川県さぬき市にある「香川東部溶融クリーンセンター」で稼働している。(写真:香川県東部清掃施設組合)
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 開発したのは、プラント建設などを手掛ける日鉄エンジニアリングだ。製鉄大手の日本製鉄(旧・新日鉄住金)のエンジニアリング部門が2006年に独立して発足した企業で、製鉄用の高炉の技術を応用した「ガス化溶融炉」というタイプのごみ発電プラントを手掛けている。

 香川県のさぬき市には、同社製のガス化溶融炉の中でも最新の低炭素型が導入されており、今回、そこに力覚フィードバック付きの遠隔操作ロボットを適用した。力覚フィードバックについては、慶応義塾大学 特任教授の大西公平氏の研究グループと同大発のベンチャーであるモーションリブとの共同研究の成果を基にしている1)。力覚フィードバック自体は古くからある技術だが、現在、世の中でそれほど普及している訳ではなく、プラントのような大型の産業設備で本格稼働させているのは珍しいといえる。

数少ない重労働を代替

 現在、ごみ発電プラントのようなシステムでは、その操業・運用の大半が自動化・機械化されている。ただ、すべてが自動化されている訳ではなく、部分的には人手での作業が残っていた。その1つが、炉内での物質のこびりつきを除去し、奇麗にする作業だ。