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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 Preferred Networks(PFN)と鹿島は、高層ビルの建設現場など複雑な環境でロボットを自律移動させる技術「iNoh(アイノー)」を開発した。

 PFNが持つディープラーニング(深層学習)技術を生かし、周囲の3次元形状を認識したり、現場内で行き交う人や高所作業車、床に置いてある資材など検出し、動的に回避できる。鹿島の建設現場で10万枚もの画像を収集し、ディープニューラルネットを学習させた。

 自律移動技術のiNohを生かし、まずはその応用第1弾として清掃ロボット「raccoon」を開発した(図1)。現場内で進入禁止エリアなどの設定を行わずとも、作業員がいる環境で安定的に清掃作業をこなす。躯体工事が終了した後の内装工事や設備工事の段階で利用することを想定している。首都圏にある鹿島の建設現場10カ所ほどでテスト済みで、近いうちの本格稼働を目指す。なお、名称のiNohは、現場を知っている(I know)という意味と、江戸時代に日本地図を作った人物「伊能忠敬」に由来している。

図1 首都圏の建設現場で試験稼働
図1 首都圏の建設現場で試験稼働
Preferred Networksと鹿島が共同開発した清掃ロボット「raccoon」の稼働の様子。(写真と下記動画:日経Roboticsが撮影)
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障害物の多い建設現場

 一般に、竣工後の高層ビルの中を車輪型のロボットが自律移動することは特に難しいことではない。清掃ロボットについても既に多くのものが実用化され、オフィスビルや商業施設などで運用されている。自律移動のためのSLAM技術も実用レベルのものが出来上がっているほか、最近ではロボットがエレベータに自動で搭乗する仕組みも出来上がりつつある。

 しかし、同じビルであっても建設中となると話は少し違ってくる。建設中のビルは床に工事用の電源ケーブルなどがはっていたり、資材が置いてあったりなど障害物が多い。躯体工事が終了した直後の状態では、床に大きな穴が開いていることもある。配管やエレベータなどを通すためのものだ。これらの開口部は作業員が転落しないよう仮の手すりが設置してあるが、ロボットが建設中のビル内を安全に自律移動するにはこれらも頑健に認識する必要がある。

 PFNと鹿島が開発した清掃ロボットのraccoonは、ハードウエア的な移動能力についてはオーソドックスなものだが、周囲の環境を認識するソフトウエア的な能力を格段に高めたことで、自律移動ロボットを建設現場で実用できるようにした点に意義がある。