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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 産業機械メーカーの村田機械は、屋外のゴルフ練習場で、芝生の上のボールを自動で収集する「集球ロボット」を開発した(図1)。ゴルフ練習場設備の設計・施工を行う喜和産業との共同開発である。

 ゴルフ練習場では、客が打ったボールは、多くの人手をかけて回収している注1)。営業中は打球でケガをする危険性があるため、営業終了後の深夜に行うケースが多い。広い練習場内を人が歩き回り、専用の収集器具などを使ってボールを拾うため、負担が大きかった。

図1 ゴルフ練習場向けの集球ロボット
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図1 ゴルフ練習場向けの集球ロボット
工場や物流向けの搬送システムなどを手掛ける村田機械は、ロボットの自律移動を支援する装置の販売も行う。ゴルフ練習場設備の設計・施工を行う喜和産業と共同で、ゴルフ練習場でボールを収集するロボットを開発した。

 今回開発した集球ロボットは、指定したエリア内を自律走行。回転式のローラーを牽引しながらボールを絡め取る。走行ルートの設定などを含め、800万円台の価格で販売しており、既に関西のゴルフ練習場など4カ所に納入済みだ。

 村田機械は、なぜゴルフ練習場向けのロボットを開発したのか─。同社の本業は、工場や物流向けの搬送システムなどの製造だが、最近は新規事業としてロボットの自律移動装置の販売も行っている。これまでは屋内向けのロボットに装置を提供してきたが、今後は屋外向けにも広げる。その第1弾としてゴルフ練習場向けのものを開発した。

 同社の自律移動技術の研究の歴史は長く、20年にもおよぶ。自律型ロボットによる国際競技会「RoboCup」への参加を機に注2)、SLAMの基となる技術の研究をスタート。2013年には「It's Navi」というブランドで商品化した。

注1)ゴルフ練習場によっては、フィールドの面を傾斜させて施工し、ボールを転がして集めているところもある。
注2)同社は2002年から3年間、RoboCupのサッカー競技部門に参加。複数台のロボットがチームを組み、車輪などで移動しながらボールを蹴り合う。ロボットは全方位カメラなどを搭載し、自己位置推定を行っている。