米Walmart(ウォルマート)社や中国ネット通販(EC)大手のJD.com社(京東集団)、China Post(中国郵政)など、世界の錚々たる巨大企業が矢継ぎ早に導入する中国発の物流ロボットがある。
中国杭州市に本社を構える2016年創業のベンチャー、Zhejiang LiBiao Robot社(浙江立鏢机器人)のロボットだ。その名も「t-Sort(小黄人)」注1)。
40cm四方の鮮やかな黄色の筐体に荷物を乗せ、最大時速11kmのスピードで物流センター内を走り回りながら、荷物を仕分ける。数百台ものt-Sortが、わずか数cmの距離で縦横無尽に行き交い、荷物を運ぶ光景は圧巻だ。
この中国発のロボットが、このほどついに日本に上陸した。
物流専業の三井物産グローバルロジスティクスが2019年に導入したほか、「ROPÉ PICNIC」などのブランドを手掛ける老舗アパレルメーカーのジュン(JUN)が、物流専業ではない純粋なユーザー企業として初めて導入。福島県の拠点でECや自社店舗向けの仕分けにフル活用している(図1)。
t-Sortは世界全体では累計1万台以上が稼働しているが、日本国内でもジュン以外に化粧品メーカー、宅配事業者などが導入し、既に650台が稼働するなど急速に成長を遂げており、要注目のロボットだ。
中国発の物流ロボットというと、本誌が2018年1月号で解説した北京発のGeekplus Technology社(以下、Geek+社)のロボット「EVE」も著名である。中国EC最大手のAlibaba Groupが直営のネットスーパーで導入するなどして急成長し、2015年の創業からわずか5年で20カ国以上に普及し、1万台を出荷した。
中国のECは年間200兆円ほどもある大きな市場であり、その巨大市場で揉まれ、競争を勝ち抜いてきたロボットが世界に進出し、日本に上陸するという流れは、Geek+社や今回のLiBiao社に限らず、今後も続くだろう。
最初は紡織機で創業
t-Sortの開発元のLiBiao社は、CEOを務める女性のXia Huiling(夏 慧玲)氏が2016年に創業した若い企業である(図2)。