農作物への農薬散布でドローンの活用が広がっているが、陸上を走行するタイプのロボットも使われ始めている。埼玉県深谷市の農業法人、ファームヤードがネギの農薬散布をロボットで効率化した。同社はネギなどの露地野菜の栽培を大規模に手掛けており、圃場の総面積は70ヘクタールもある。これまで同社は、人が乗り込んで操縦するタイプの散布機「ブームスプレーヤ」を使い、従業員が農薬散布を実施してきた。こうした従業員の負担を減らすため、今回、ネギの圃場の一部についてロボットによる散布を取り入れた。同社はネギのほかにもキャベツや玉葱なども栽培しているが、まずは売上高が高いネギを対象とした。
散布作業はロボットの開発元企業に委託している。深谷市に本社を置く農業ロボットベンチャーのレグミンである。同社はロボットを開発するとともに、農薬散布作業も農家から請け負っている(図1)。ネギ向けの農薬は原液を大きく希釈して散布する必要があり、容量がかさむため、可搬質量が小さいドローンでの散布にはあまり向かない注1)。このため、畑の中を走行しながら散布できるロボットをレグミンは開発した。
ファームヤードはネギを通年で出荷するために、苗の植え付け時期をずらして栽培している。このため、出荷時期と散布時期が重なることがある。散布を行う従業員はほかの作業も兼務しているため、出荷が忙しい時期には収穫や箱詰め作業などを優先しなければならず、散布に手が回らないこともあった。同社は、散布作業をレグミンに委託したことで、適切な時期に農薬を確実に散布できるようになった。その結果、病気の発生などを防げたことで、収量も増加したという。