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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 外食産業では現在、配膳ロボットの導入が活況だが、来店客のいるホール側だけでなく、厨房などバックヤード側の改善も少しずつ進んでいる。バックヤード側でのロボット活用は来店客から直接見えるものではなく、目立ちにくい取り組みだが、外食産業での業務効率をアップさせる上で欠かせないテーマだ。

 こうしたバックヤード側での自動化・ロボット導入に先進的に取り組んでいる企業の1つが、牛丼大手の吉野家だ。

 牛丼店というと、都市部ではカウンター席のみの店舗が多く、ロボット設置のためのスペースを確保しづらいイメージがあるかもしれないが、実は吉野家の全国の1200ほどの店舗のうち、その多くが厨房などに比較的スペースのある郊外型の店舗だ。こうした郊外型店舗での利用を念頭に、吉野家は厨房でのロボット導入に向けた取り組みを地道に進めている(図1)。

図1 ロボットを利用している店舗
図1 ロボットを利用している店舗
東京・足立区にある「足立保木間店」。
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 同社が最初に自社店舗にロボットを導入したのは、2016年12月のこと。東京都足立区にある郊外型店舗「足立保木間店」に協働ロボットを1台、導入した1)。採用したのは、日本のロボットベンチャー、ライフロボティクスが開発した「CORO」である。通常のロボットアームと異なり、COROは肘に相当する関節がなく、直動の伸縮機構でアームを伸び縮みさせる仕組み。肘が周囲の環境に衝突することがなく、飲食店の厨房のような狭いスペースにも設置できることを強みにしていた。吉野家もこの点に目を付け、COROを採用したのである。

 吉野家が目指すのは、多くの店舗にロボットを導入し、厨房での業務を効率化すること。そのためには、徹底した低コスト化と省スペース化、そして不具合の洗い出しが必要になる。同社はこの足立保木間店で稼働しているロボットシステムを使い、実店舗での実際の業務を通じて、多店舗展開を見据えたシステムの検証、およびブラッシュアップを重ねて行く方針だった。

開発元をファナックが買収

 しかし、2018年、急転の出来事が起きる。このCOROの開発元であるライフロボティクスが産業用ロボット大手のファナックにより買収されたのだ。

 会社が買収されたとはいえ、当初はCOROのユーザーはそのまま同機を使い続けられるとの観測も業界には一部あった。しかし、本誌が2018年8月号で特報した通り、ファナックはライフロボティクスの株式を取得して子会社化しただけにとどまらず、本体に吸収合併2)。さらにはライフロボティクスの製品であるCOROを原則として全品回収し、ファナック製の協働ロボットに交換する意向を示した3)。ファナック 代表取締役会長(当時はCEOも兼務)の稲葉善治氏は当時、本誌のインタビューで「COROはまだ試作の域を出ていないというのが実態。このままお客様にお使いいただく訳にはいかない」と、回収という判断に至った理由を述べている。

 厨房業務の効率化に向け、外食産業において先駆的な取り組みをしていた吉野家は、この事態を受けて、ロボットシステムをその後どのようにしたのか。今回の記事では、全く知られていない、ライフロボティクス買収後の吉野家のロボットへの取り組みを紹介しよう。