Professor’s Eye
目次
-
ロボットは未知の機能を自律的に発見できるか
読者の皆さんはいつから自分の仕事や役割を発見して、それがまともに達成できるようになったであろうか。言うまでもなく我々人間は生まれてから長期間、目的を持たずに成長発達し、少しずつ自分の居場所、役割、仕事を見つけて社会の一員として人生を全うしていくことになる。
-
コロナ後の米国大学「入試」
本稿は2020年4月号掲載「米国の大学『入試』と高校教育」の続編である。筆者の娘がいよいよ高校の最終学年に入り、今秋から来年初頭にかけて次々やってくる出願締切に向けて大詰めに差し掛かってきた。
-
キャリア形成における選択肢としての米国大学への進学
本稿では進学先の1つとしての米国大学、大学院進学の実情を紹介する。現在の状況では、学位取得を目的に米国に滞在している日本人は他国出身者に比べて少数である。アジア圏からは中国、インド、台湾、韓国などからの学生が圧倒的に多い。イギリスやドイツからの留学生がそれほど多くないのと同様で、自国の高等教育の充…
-
フィジカルコンピュテーションとロボット工学:情報処理はどこで始まりどこに行くのか
現代のロボットや知能機械システムには必ず電子回路やコンピュータが搭載され、それによって自動制御されている。筆者が住む英国では今日も多くの機械式のサーモスタットや電気湯沸かしポットを見かけるが、それらも日本ではほぼ全てマイコン制御となっている。このように現代の自動制御システムでは物理状態を電気信号に…
-
スタートアップの「夢」と「嘘」
“Fake it till you make it”(できるまで、できたふりをしろ)というのはシリコンバレーの起業家のメンタリティを表すときによく使われる言葉である。イノベーションを起こす可能性のある技術が実際に完成するかどうかはやってみるまでわからない。一方、投資家としては、実現可能性も投資の可…
-
(続)時間と空間の高い繰り返し精度を活用してこそ、ロボティクスの医療応用は意味がある
筆者は以前のコラムで、ロボットの高い時間精度が医療における運動機能回復手技の発展に貢献できる可能性について述べた。ロボット技術のもう1つの特長である高い空間精度の複雑な外科手術への適用は既になされており、ある程度の市場も確立されている。この分野の研究開発および実用の現状を踏まえ、再びロボティクスの…
-
ロボット開発プロジェクトが失敗する理論的理由と絶対に失敗させない方法
ロボットの設計開発にはやって良いことと悪いことがある。これをあまり考えずに思いつきで設計開発を行うと無駄な労力や失望に見舞われることになる。特にロボット作りを夢見て研究室に入ってきた学生などがとにかくむやみにロボットを作り始め、夢破れる姿を無数に見てきた。かく言う筆者も学生時代には多くの失敗を重ね…
-
ハードウエア研究の今後
2021年7月23日、米Alphabet社(米グーグルの親会社である持ち株会社)は産業用ロボット向けソフトウエアの研究開発を主な業務とする新会社、米Intrinsic社の設立を発表した。Alphabet社のグループ会社で長期プロジェクトを担当するX Development社(旧社名Google X…
-
コロニアル・パイプライン社に対するサイバー攻撃と、暗号化制御
2021年5月、米国東部で消費される燃料の約半分を供給している米Colonial Pipeline社がハッカー集団ダークサイドからランサムウエア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃を受け、操業を停止した。この事件が報じられた当初は備蓄も十分なため、操業停止が長引けばゆっくりと米消費者や経済に…
-
身体性知能は機械学習を超えられるか
身体性(Embodiment)という概念は古くから哲学において研究されてきた。起源をたどれば心身二元論などに行きつき、身体と心や知能がどのような関係にあるのかという問題は古くから語られ続けている。
-
コロナ禍の人-ロボットインタラクション研究
人と人が直接対面するのが難しくなったのに伴い、代替手段として脚光を浴びた分野の1つにロボットがある。自律移動機能を活用した自動除菌・消毒や自動配送、テレプレゼンスロボットを応用した遠隔診断、さらにはロボットとのコミュニケーションを通じた心理的なサポートなど、コロナ禍前から開発されてきた技術を転用し…
-
米国大統領選挙と大学運営への影響
バイデン新大統領の就任式が1週間後に迫る時点で本稿を執筆している。筆者が米国在住になってから最初の大統領選は2008年、民主党オバマ大統領の一期目就任時であった。そこから何回か選挙が行われたが、今回の大統領選挙ほど多くの社会的混乱が生じたことはなかった。
-
ロボット工学最新動向を知るための学術論文の読み方、選び方
ハードウエアを扱うロボット技術は時に長期的展望に基づいたロングスパンの研究開発が必要となるが、10~20年先まで技術や研究のトレンドや進展を見通すのは簡単ではない。新しい技術や研究トレンドの大きな流れの多くは大学や研究機関で起こるものの、世界中の研究機関の活動や成果をいち早く見出すためには一次情報…
-
コロナ禍後のシリコンバレーはどうなるのか
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、筆者が住むシリコンバレーを含むベイエリアでは米国で最も早く2020年3月16日に自宅待機(shelter-in-place)命令が出され、翌17日から施行された。カリフォルニア州、ニューヨーク州が同様の命令を出す3~4日前である。
-
コロナで浮き彫りになる米国教育の歪み
2020年初頭からの新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大(コロナ禍)によって我々の生活様式は大きく変わってしまった。本稿執筆時点(2020年7月中旬)において、筆者が居住するジョージア州を含む米国南部および西海岸では、1日あたりの新規感染者数が過去最高を更新する日々が続いている…
-
生物に学ぶロボットナビゲーション技術の展望
ナビゲーション技術はロボット工学の研究が始まった当初から基幹技術として研究され続けている。昨今は自動運転やドローンの自律制御などのアプリケーションとして利用されるようになり、企業の研究・開発者まで巻き込んだ開発体制が確立され、ついにロボットナビゲーション技術が完成し、研究に終止符が打たれる日が来る…
-
米国の大学「入試」と高校教育
私事で恐縮だが、娘が昨年高校に進学した関係で最近「米国の大学への入り方」をいろいろ調べているところである。そこへ日本の大学入学共通テストを巡る混乱も耳に入ってきて、日米の大学入学者選考とその前段階としての高校教育に対する考え方の違いに驚くことが多くなった。
-
大学での基礎研究の市場性と実用化、特許取得、応用研究と実用化について
大学での基礎研究の成果を知的財産(IP)として実用化し、産業界に貢献することは、特に工学分野では高く期待されている。しかしながら日々の研究活動で生み出される新しいアイデアが製品として広く世に出ることは決して多くない。
-
最強ロボット開発チームの作り方とは
筆者が教鞭を執っている英University of Cambridge工学部では学部2年生全員にロボットの設計・製作実習が必修科目として義務付けられている。工学部自体は機械、電気、土木、情報、経営工学などの7学科から構成されており、ほとんどの学生はあまりロボット工学とは関わりのない専門分野に進むこ…
-
パーソナルアシスタントロボット、普及への課題
数年前、パーソナルアシスタントロボットがブームのようになり、ベンチャー・大手から新製品が多数発表されて話題になった。しかし、そのほとんどが十分な需要を掘り起こせず、最近は撤退が相次いでいる。