ナビゲーション技術はロボット工学の研究が始まった当初から基幹技術として研究され続けている。
昨今は自動運転やドローンの自律制御などのアプリケーションとして利用されるようになり、企業の研究・開発者まで巻き込んだ開発体制が確立され、ついにロボットナビゲーション技術が完成し、研究に終止符が打たれる日が来るのかという議論も聞かれる。本当にロボットナビゲーションの研究は終わるのであろうか。
SLAMの弱点
ロボット工学の教科書にはロボットナビゲーションとはすなわちSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術であると紹介されることが多い。ほとんどのロボット技術者にはロボットにナビゲーションをさせようと思えば、一番先に頭に思い浮かぶ手法であろう。
SLAM技術ではロボットが全く知らない場所に置かれたところから、自らのいる場所の周辺地図を作る作業(Mapping)とその作成した地図の中で自分がどこにいるのかを同定する作業(Localization)を同時に実行する。当然のことながら、地図がなければ自分の場所が分からず、自分の場所が分からなければ地図も作れないので、このトレードオフをGPSやLIDARなどから得られたセンサ情報と確率論的推定法などを用いて辻つまの合う状況を探し出す。 換言すれば、SLAM技術の根本的な問題は環境の地図と自分の居場所の関係が全てを決める。
我々人間の観点から考えるとナビゲーションには地図が必須であるというのは自明のように感じられるが、地図を使ったナビゲーションには多くの問題がある。