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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 ハードウエアを扱うロボット技術は時に長期的展望に基づいたロングスパンの研究開発が必要となるが、10~20年先まで技術や研究のトレンドや進展を見通すのは簡単ではない。

 新しい技術や研究トレンドの大きな流れの多くは大学や研究機関で起こるものの、世界中の研究機関の活動や成果をいち早く見出すためには一次情報の取得分析が不可欠である。

 これら情報には「宝の山」があるはずで、研究者だけでなく他の開発企画担当者や経営者・投資家も分析を強いられることがあるかもしれない。そこで本稿では学術論文から技術や研究のトレンドを分析する方法を議論してみようと思う。

未来予測ツールとしての学術論文

 一般に研究者の業績として第一に挙げられるのが学術論文であり、そこには多くの有益な情報が含まれているはずである。実際に研究者の履歴書では発表論文のリストが必ず要求され、ノーベル賞の授賞理由などにもその基になる論文が示される。

 ところが世の中には文字通り星の数ほどの学術論文があり、学術論文を行き当たりばったりで読んでみて、何か有益な情報を得られることはあまりない。世に出される学術論文の2割ほどは出版されてから誰にも読まれないということも言われている。

 さらにロボット工学では近年論文数が劇的に増加しており状況は更に悪化している。例えば代表的なIROSやICRAなどの国際会議ではそれぞれ毎年千件以上の研究発表があり、十数年前と比べて2倍近くに増えている。また国際学会や学会誌自体も次々と創設され、IEEE関連だけでも毎年十数個のロボット国際会議があり、10誌ほどの主要なジャーナルがある。論文サーベイを一年中していたとしてもとてもカバーできる量ではない。それではどのように学術論文から未来予測に必要な一次情報を見い出せるであろうか。