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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 2021年7月23日、米Alphabet社(米グーグルの親会社である持ち株会社)は産業用ロボット向けソフトウエアの研究開発を主な業務とする新会社、米Intrinsic社の設立を発表した1)。Alphabet社のグループ会社で長期プロジェクトを担当するX Development社(旧社名Google X社)で数年前に始まったプロジェクトがスピンオフしたものである。同様にGoogle X社から始まってスピンオフした会社として自動運転の米Waymo社があり、グーグルとしてもロボティクスの事業化へ向けて本格的に動き始めたことがわかる。

 Google X社におけるロボティクスといえば、2013年にSCHAFT(シャフト)や米Boston Dynamics社などを相次いで買収したものの、いずれも数年後には解散あるいは売却に至ったのが記憶に新しい。

 ハードウエアに強みを持つ両社を手放す一方、ほぼ同時期にロボット向けソフトウエアのプロジェクトを社内で開始したことから、グーグルはハードウエアの自社開発をあきらめ、得意のソフトウエアに集中する戦略を取ったとも考えられる。実際、Intrinsic社のサイトにあるデモビデオに登場するロボットは、いずれも産業用に市販されているものである。

ソフト寄りの研究が多い米国

 ロボティクスにおいて、ソフトウエアとハードウエアが切っても切れない関係にあることは言うまでもない。RTミドルウェアやRobot Operating System(ROS)を使ってデータの入出力を抽象化すればある程度ハードウエアに依存しないソフトウエアにすることはできるが、いくらソフトウエアが優秀でも実際にないセンサやアクチュエータは使えないし、最終的なパフォーマンスは加工・組み立て精度などソフトウエア以外の要素にも大きく依存する。したがって、ハードウエアとソフトウエアの両方が揃って初めて良いロボットができる。

 しかし、実際には同じ研究グループや企業がソフトウエアとハードウエアの両方で抜きんでることは難しい。