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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 筆者は以前のコラム1)で、ロボットの高い時間精度が医療における運動機能回復手技の発展に貢献できる可能性について述べた。ロボット技術のもう1つの特長である高い空間精度の複雑な外科手術への適用は既になされており、ある程度の市場も確立されている。この分野の研究開発および実用の現状を踏まえ、再びロボティクスの医療応用について述べようと思う。

医療ロボットのバリュープロポジション

 新しい技術を医療現場に導入する上で、それが患者に対して永続的に使われる技術であるのか、ステークホルダー(利害関係者)の意向を取り入れることは言うまでもなく重要である。その意味で医療業界は複雑であり、1)患者および家族、2)医師および病院など医療提供者、3)技術者および機器メーカー、4)認可機関および医療保険(米国では主に私企業、自治体が公的保険を付与する国もある)がステークホルダーとされている。さらには5)世論を考慮する必要もある2)