本稿は2020年4月号掲載「米国の大学『入試』と高校教育」の続編である。筆者の娘がいよいよ高校の最終学年に入り、今秋から来年初頭にかけて次々やってくる出願締切に向けて大詰めに差し掛かってきた。前回も書いたように、米国の大学は学業成績だけでなくボランティア活動、課外活動、スポーツ、エッセーなど様々な情報を集め、校風に合うかどうか、大学コミュニティ全体に貢献できそうかを含めた総合的な評価で合否を決める。
この多面的な評価という基本的な枠組みはコロナ禍後もほとんど変わっていないが、一つ大きな変化として共通テスト(SAT/ACT)の点数がほとんどの大学で任意提出になったことがある。当初は試験の中止が相次いで受験が難しくなったのが理由だったが、安定的に実施されるようになった今でもほとんどの大学が任意提出を継続している。共通テストに関しては、コロナ禍前から家庭環境の影響が大きいので公平な評価ではないという批判があったためかもしれない。
University of California(Berkeley、UCLA等)の対応はさらに極端で、将来も一切考慮しないことを決めている。これに対し、唯一MITが2023年入学の学年から必須に戻すと発表して注目された。理由は、共通テストの点数を見ることにより教育機会に恵まれない学生を含めて学業の習熟度をよりよく評価でき、公平で透明性の高い選抜が行えるためという。特に数学は入学者の出願時の点数と入学後の成績の相関が高く、このような結論に至ったということである。