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ロボットを使って家事をこなしてほしいというのは昔から存在するテーマである。例えば、2008年に米Stanford Universityが実施した実験では1)、ロボットのPR1を人が遠隔操作することで、冷蔵庫を開けてビールを取り、蓋を開けて人に渡したり、床に散らかったおもちゃを片付けたり、食洗機に皿を入れたりといったさまざまなタスクがこなせることを示した。
この実験からは、家事をこなすためのハードウエア環境は整っており、あとは人が遠隔操作をすることで解いていた部分、環境を認識しそれに応じてロボットを適切に制御することさえできれば解決できるとみられていた。

Preferred NetworksはCEATEC JAPAN 2018で「全自動お片付けロボットシステム」を展示した2)。
この展示ではトヨタ自動車が開発し、研究開発用に提供している生活支援ロボットHSR(Human Support Robot)を使い、ロボットが部屋を自動的に片付けるデモを行った(図1)。
一般家庭の部屋の床に片付け対象アイテムがランダムに散らかっており、ロボットがそれらを指定された場所に片付けるというものである。家具は全て本物であり、片付け対象アイテムは日常生活で見られるものから約100種類を選んでいる。ロボットはそれらのアイテムを認識し、把持し、落とさないよう運び、物体の種類ごとに指定された場所へ、指定された状態で片付けていく。
また、ロボットに対し、言葉やジェスチャーを使って、どこに片付けるのかを指示することができる。指示内容を把握するために、音声認識や人の姿勢認識を実現している。ロボットは全ての物体がどこにあるのかを把握しているため、人が探しているものがどこにあるのかをロボットに問うと、「靴下は玄関の積み木の近くにあります」といったように答えてくれる。このように現実世界の環境がデジタル化され、コンピュータが扱えるようになることで、今後様々なサービスが生まれてくると考えられる。
このロボットで1つのものを片付けるのには、大体30秒から1分かかり、散らかった部屋は1時間程度で片付けることができる。4日間のCEATEC開催期間中、2台のロボットが片付けたアイテムの総数は約5000個に上り、その間、定期的な電池交換や数回起きた物体の巻き込み時を除いて、ほぼ人が介入せず安定して動き続けることができた。
この開発にはデータ収集を含めて半年程度の期間を要し、期間中で平均して20人程度が携わった(図2)。以降では、この展示に使われた技術について紹介していく。