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様々な問題の物理シミュレーションは、シミュレーション技術の改良や計算機の性能向上により実応用が進んできたものの、まだ精度や速度面で困難な場合が多くある。

物理シミュレーションが本質的に難しい理由として、物理世界の情報(空間や時間、内部状態)が連続量であり、それらの上での微積分などが必要なのに対し、計算機上で扱えるのは離散化された情報だけであり微積分もほとんどの場合は解析的に解けないため数値解析で近似的に解く必要があることが挙げられる。
例えば空間をグリッドに分割して近似した場合、グリッドの解像度を上げることで精度を改善できるが、計算量は解像度の2乗や3乗のオーダーで増えていく。さらに厄介なのが、多くの問題で微視的な現象が巨視的な現象に大きな影響を与える場合があり、シミュレーションで扱う最小スケールと最大スケール間が数百万倍から数億倍も異なるマルチスケールな問題を扱う必要があることである。