全7320文字
PR
この記事は日経Robotics 有料購読者向けの記事ですが
日経Robotics デジタル版(電子版)』のサービス開始を記念して、特別に誰でも閲覧できるようにしています。
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 2021年7月6日、Preferred NetworksとENEOSの共同出資で設立されたPreferred Computational Chemistry(略称PFCC、筆者が代表を務めている)は汎用原子レベルシミュレーターMatlantis1)をクラウドサービスとして提供開始したことを発表した。原子スケールのシミュレーションを従来のシミュレーションと比べて精度を保ったまま10万倍から数千万倍高速化したほか、55種類の元素をサポートし未知の分子や結晶など未知の材料に対してもシミュレーションできる汎用性を兼ね備えている。この元になっているのが深層学習(ディープラーニング)を使ったNNP(ニューラルネットワークポテンシャル)である。

著者の岡野原大輔氏
著者の岡野原大輔氏

 本稿では、現代における材料探索の重要性を説明した後、NNPやMatlantisの技術、現在の課題と将来の展望について解説する。

材料探索は持続可能な社会実現の鍵となっている

 これまで新しい材料や素材は新しい生活や産業を切り開いてきた。代表例として窒素固定による農業生産革命、鉄鋼や炭素繊維を使った自動車や飛行機、半導体による計算機の実現が挙げられる。ここでは新しい触媒の発見が持続可能な社会を実現する上で重要になっていることを説明する2)