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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 人や動物はナビゲーションタスクを実現するために認知地図(Cognitive Map)と呼ばれる環境の地図情報、空間表現を持っていると考えられている。

 人は初めて入った建物でも、そこをいろいろ歩き回ることで、どの部屋とどの部屋がつながっているのか、それらが空間的にどのような広がりを持つのかを把握し、目的地への移動を難なくこなすことができる。こうした認知地図の構築や運用は無意識下で行われており、実際どのように構築、運用しているかはよく分かっておらず、大きな未解決問題である。

著者の岡野原大輔氏
著者の岡野原大輔氏

 例えば2021年2月号の本欄記事のように、人や動物は空間情報を場所細胞やグリッド細胞などを使って処理しているところまでは分かっている。一方でこうした細胞がどのようにその情報を扱えるようになるのか、様々なタスクを達成するためにこれらの情報をどのように処理するのか、より複雑な空間情報(異なるスケールの空間情報、建物内、建物から駅、駅から遠くの街の駅の組み合わせなど)をどのように処理するかといったことは未解決である。