自動運転技術を秘密裏に開発していると言われる米Apple社(図1)。同社の自動運転向けAI技術の一端が明らかになってきた。
Apple社は米グーグル、米Amazon.com社、米Facebook社といったAIの先進企業と同様、機械学習分野の研究者を多く雇い入れているが、彼らが開発した自動運転向けの機械学習技術の一例を今回は紹介しよう。
Apple社の自動運転開発部門は一時、200人規模の人員削減なども報じられたが1)、2019年6月には自動運転スタートアップの米Drive.ai社を買収するなど、依然として積極的な姿勢を取り続けている(図2)。
2018年には、Apple社出身で直近まで米Tesla社でSenior Vice President Engineeringを務めていたDoug Field氏が出戻りでApple社に入社。Tesla社でVice President Engineeringを務めていたMichael Schwekutsch氏も2019年にApple社に入社するなど人材採用を強化している。
米国カリフォルニア州で公道テストを行う自動運転車も台数を急速に増やしており、当局から承認を受けた車両は既に70台以上にも上る。自動運転に欠かせないセンサであるLIDARを自社開発しているとの噂もあるほどだ。
深層学習の精鋭を次々採用
中でもApple社が自動運転関連で力を入れているのが、周囲の環境を認識したり、運転行動を生成したりするAIの開発である。機械学習関連の技術者を大量に雇い入れている。例えば、ディープラーニング技術の父とも言われるGeoffrey Hinton氏(カナダUniversity of Toronto名誉教授)の教え子、Ruslan Salakhutdinov氏が2016年にApple社に入社。現在、Director of AI ResearchとしてApple社のAI研究を束ねている。2019年には、敵対的生成モデル「GAN」の考案者である、あのIan Goodfellow氏もApple社に入社した。
なお、Salakhutdinov氏はディープラーニング技術がブームとなる以前からHinton氏とともにディープニューラルネット(DNN)の研究をしていた人物で、ボルツマンマシン型のDNN「Deep Boltzmann Machines」を提唱したり、ブームの勃興後もDNNの枝刈り手法「Dropout」を考案するなど、深層学習の分野で多くの実績を上げてきた著名研究者だ。
それではApple社は具体的にどのような自動運転AIを開発しているのか。