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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 “ロボットの眼”となる画像センサに、新しいタイプのデバイスが台頭しつつあることをご存じだろうか。

  現在、ロボットではRGBカメラ、距離画像(depth)センサ、LIDARなどが“眼”として使われることが多いが、ここに新たなタイプの画像センサが加わりそうなのだ。

 それが「イベント駆動型カメラ(event-driven camera、event-based camera)」である。画像中の輝度値の変化に反応して、その変化があったタイミングで非同期にデータを出力するタイプの画像センサである(図1)。

図1 イベント駆動型カメラによる撮影画像の例
図1 イベント駆動型カメラによる撮影画像の例
イベント駆動型カメラはダイナミックレンジが非常に広いため、赤外線などの手段を使わずとも、暗い環境下であっても動く物体を検出できる。下は通常のRGB画像。(写真:ソニーとProphesee社)
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 フレーム速度が数十msと一定である通常のイメージセンサと異なり、イベント駆動型カメラはその1000倍速い数十μsのオーダーで画像上の変化に瞬時に反応してデータを出力することから、「DVS(dynamic vision system)」とも呼ばれる。既存のフレームベースのカメラにはない圧倒的な高速性・低遅延が最大の特徴だ。

 変化(イベント)のあった画素のみを非同期に動作させ、それ以外の多くの画素は待ち受け状態で活動しないため、ハイスピードカメラなどフレームベースの他の高速ビジョンと異なり、高速であるにも関わらず消費電力は非常に低い(表1)。動きに“脊髄反射的に”対応することに特化したイメージセンサといえる。