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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 東芝は、機械学習モデルの予測・分類性能を維持する保守の手間を大きく削減できる学習技術を開発した。モデルの再学習に伴う人手の作業を、従来の1/4まで減らせるとする。この技術を「Transfer Lasso」と名付けて、2020年12月にオンライン開催された機械学習技術のトップカンファレンス「NeurIPS(Neural Information Processing Systems)2020」で発表した統計数理研究所との共著論文・参考文献1)

 実用化も近い。同社は2020年度末までにパワー半導体の工場に適用する予定である。さらに2021年度末までには、化学プラントなどの監視制御システムへの搭載を目指している。

定期的なモデル更新に効果

 Transfer Lassoが効果を発揮するのは、機械学習モデルを定期的に更新するような用途である。例えば半導体工場では不良の原因を探るために、製造プロセスから集めた多次元データを基に、個別のチップの特性予測や不良品の判定に使う機械学習モデルを定期的に作成している(図1)。ここで、伝統的な機械学習技術の「Lasso(least absolute shrinkage and selection operator)」を使って、多数の変数から成る線形モデルを学習させると、ほとんどの変数の係数が0になる2)。モデルの出力に強く影響する、ごく一部のスパース(まばら)な変数のみに有効な係数が割り振られるので、それらが不良の要因と解釈できる。