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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 複雑な動作をいかにしてロボットに教え込むか。そのための有力な手段として、機械学習ベースの「模倣学習(IL:imitation learning)」という手法がある。人間がロボットを操作した際の動作をお手本として学習し、その学習結果を基にロボットを自律的に動かすものである。ディープラーニング技術の興隆などにより、この模倣学習の技術は発展を遂げており、実用を目指して開発が進みつつある。

 そうした中、複合機メーカーでロボット事業への参入を目指しているリコーが、模倣学習技術の領域で新しい成果を出した。

 模倣対象となるお手本の動作データに、外乱や操作ミスなどのノイズ(雑音)が混じっていても、自動的にそれらを抑制。正しい動作データに寄せて学習できるという技術である。ノイズを抑制するのにアノテーションなどは不要であり、アルゴリズム側が自動的に「正しいお手本」を見いだし、ノイズデータの影響を抑制しながら、目的とする動作を獲得できる。ノイズがある環境下において模倣学習の多くの既存手法を凌駕し、最高レベルの性能を実現した。

ハードウエアから自社開発

 リコーは本誌が2019年1月号で詳報したように、アーム付き移動ロボットへの事業参入を狙っている1)。複合機で培ったハードウエア技術を生かし、ロボットアームとクローラー型の移動ロボット、それぞれを自社開発している。

 用途としては、クローラー型であることを生かし、主に屋外で搬送や巡回、アームを使ったタスクなどを想定している。移動におけるナビゲーションおよびアームの動作、その双方に模倣学習技術を応用する狙いだ。現在は移動ロボットにおけるナビゲーションの方に模倣学習を実機適用し、検証を進めている(図1)。SLAM技術を用いた場合との比較検証なども実施している。「動的な環境や不整地など現状のSLAM技術が苦手とする局面では、模倣学習技術の柔軟さが生きるとみている」(リコー デジタル戦略部 デジタル技術開発センター 第一開発室 サービス・ロボティクス技術開発グループ グループリーダーの山科亮太氏)。

図1 模倣学習を適用予定のリコーのクローラー型移動ロボット
図1 模倣学習を適用予定のリコーのクローラー型移動ロボット
クローラーに同社独自の工夫を施してあり、走破性と小型さを両立させている。
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