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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 世界最大の規模を持つ中国のEC市場。そこでAlibaba Group(阿里巴巴集団)に次ぐシェアを持つのが京東集団(JD.com社)だ。売上高は約11兆円、年間取扱高(流通総額)は約40兆円(2兆6125億元、1元15.4円で換算)にも上る。

 そのJD社、「BAT」と呼ばれる中国の巨大IT企業、Baidu社、Alibaba社、Tencent社と比べると先端技術のイメージは薄いかもしれないが、実はロボットやAIの技術を積極的に開発している(図1)。

図1 数十の都市で自動配送ロボットがラストワンマイルの配達を担う
図1 数十の都市で自動配送ロボットがラストワンマイルの配達を担う
京東集団(JD.com社)は配送ロボットを自社開発し、300台以上を運用している。(写真:JD.com社)
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 JD社はAlibaba社と異なり自社でEC向けの物流インフラ網・配達員を抱えており、当日配達などスピード配送をウリにしている。そうした物流を支える技術として、ロボットやAI技術を社内の研究所で盛んに自主開発しているのだ。

 JD社は大手EC事業者であるため、自社の物流センターにおいて棚搬送型ロボットや仕分けロボット、Mujinのピッキングロボットなど物流向けのロボットを数多く利用しているが(図2)、単にそうしたロボットのユーザー企業であるだけでなく、米Amazon.com社のように研究部門を抱え、自ら物流向けのロボット技術に投資している。

図2 仕分けロボットやピッキングロボットのユーザーでもある
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図2 仕分けロボットやピッキングロボットのユーザーでもある
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図2 仕分けロボットやピッキングロボットのユーザーでもある
JD社は自社の物流センターで様々なロボットを利用している。中国LiBiao Robot社の仕分けロボットやMujinのピッキングロボットなどを利用している。 (写真:JD.com社)

荷物を載せて公道を走行

 JD社は社内でロボットやAI、ドローンなどの開発を手掛ける研究組織「JDX(X事業部)」を持っている。そのJDXの取り組みの中でも白眉といえるのが、自動配送ロボット(ADV:autonomous delivery vehicle)である。