人の代わりに車を操縦する自動運転ソフトウエアの開発には、シミュレーションを使った動作の検証が欠かせない。仮想的な空間の中で膨大な運転経験を積ませて実環境でのテストを補うのはもちろん、シミュレーションでしか実施できない検査項目も存在する。衝突事故や交通違反といった、人や車両に実害を及ぼしかねない利用状況の再現だ。
ただしシミュレーションといえども、こうした場面を意のままに生み出すことは難しい。逆走した車が突っ込んでくるといった極端な状況は別として、事故や違反の多くは偶然の条件が重なった結果である。こうした状況を再現するシミュレーションの条件設定は困難で、現実にはかなりの試行錯誤が必要になる。
国立情報学研究所(NII)の石川冬樹准教授の研究グループは、この課題を解決する技術を開発している。シミュレータで再現したい状況のシナリオを生成する技術や、テストで見つかった問題点の修正を支援する技術である(図1)。2021年11月には、ソフトウエア工学の国際会議「International Conference on Automated Software Engineering(ASE 2021)」で、その最新成果を発表した1)。いずれも、他の手法との比較などを通じて高い効果を実証している。