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自動運転車の安全性を保証する究極の方法が登場した。国立情報学研究所(NII)の蓮尾一郎教授らの研究グループは、自動車が置かれた状況ごとに、安全性の確保と運転目標の達成を数学的に証明できる運転ルールを作成する手法「GA-RSS」を開発。手法の基盤となる論理体系と運転ルール作成の手順をまとめた論文を、2022年7月に「IEEE Transactions on Intelligent Vehicles」誌で発表した1)、注1)。
研究グループの狙いは、自動運転車の挙動に数学的な保証を与えることで、安全性を大きく引き上げることだ。自動運転に対する消費者の懸念の払拭や、万一事故が起きた時の原因の究明も容易になると見る。
現在の自動運転車の開発では、安全性の指標として走行距離に対して発生した事故の件数など、統計的な数値を用いることが多い。こうしたデータはあくまでも確率的な知見であり、個別の運転状況における安全性を保証するものではない。事故を引き起こす原因の特定も、統計など経験的なデータに基づくだけでは曖昧さが残る。
注1)科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業(ERATO)」の「蓮尾メタ数理システムデザインプロジェクト」の成果である。このほか同プロジェクトでは、運転シミュレータで問題のある状況を故意に引き起こすテスト技術や、テストで見つかった問題点の修正を支援する技術なども開発している(本誌2022年4月号に関連記事)。