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高さ数十mもある巨大な建機、クレーンの操縦を自動化する技術が登場した。強化学習技術を手掛けるAIベンチャーのDeepXと、建設用クレーンメーカー大手のタダノが共同開発した(図1)。
クレーンは数十mほどの長さのワイヤに荷物をつり下げており、巨大な振り子のようになっている。操作するとワイヤがたわんだり、揺れたりするほか、ワイヤをつる鋼鉄製のブーム自体もたわむなど、他の建機と比べて各段に操縦が難しいと言われている。一人前のオペレータになるまでに長い期間を要する。
今回、両社は強化学習技術を使うことで、2地点間で荷物を搬送する際、ほとんどオーバーシュートのような揺れなしに自動操縦することを可能にした。建設分野での熟練オペレータの高齢化・不足といった問題に対処できるようになる。作業半径内で人をどのように隔離するかなど、建機を自動操作する際の安全基準が整備されてゆけば現場で利用できるようになる。
DeepXは2016年創業で、東京大学大学院 教授の松尾豊氏の研究室発ベンチャーだ。タダノは当初、松尾研究室と共同研究をしていたが、DeepX創業後は同社とクレーンの自動化について開発を進めてきた。5年以上もの年月を掛けたことが、クレーンの自動化の難しさを物語っている。DeepXは建設分野ではゼネコンのフジタとも協業しており、油圧ショベルでの掘削作業を強化学習で自動化する技術を2018年に開発している1)。今回の取り組みはそれに続くものといえる。