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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
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 パナソニックが、工場や流通現場などで使うロボットに、モデルベースの強化学習を適用するための研究開発を着々と進めている。

 2022年の9月から10月にかけて、最新の成果を相次いで公表(図1)。9月には日本ロボット学会学術講演会で、製造業などに向けたB2B事業を手掛けるパナソニック コネクトの研究者らが、異なる種類のセンサの情報を統合し、データの欠測があっても性能を高く維持できる手法を報告した1)。10月開催のロボット関連の国際会議「IROS 2022」ではパナソニック ホールディングスの研究者が、ロボットが世界モデルとして利用する潜在変数の空間を、実空間と同じ座標軸やスケールで構成することで、ロボットアームを高精度に制御する技術2)を発表する予定である注1)

図1 実ロボットへの搭載に向けて進化
図1 実ロボットへの搭載に向けて進化
パナソニックが進めるロボット向けのモデルベース強化学習技術や世界モデルの研究例と、参考にした他者の研究例を示した。最近では、カメラや接触センサといった異なるセンサを使った観測結果(モダリティ)の統合や、潜在空間の座標軸とスケールを実空間と合わせることで高精度な制御を可能にする技術「TS-NVAE」などを発表した。これまではシミュレータでの検討が主だったが、TS-NVAEが実機で高い性能を実証するなど、実機への応用が始まっている。図中の[ ]内はarXivの番号を示す。
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 パナソニックは、モデルベース強化学習技術を使うことでロボットの動作の高度化を狙う。加えて、同技術が用いる環境のダイナミクスのモデル(世界モデル)を参照することで、ロボットの挙動を説明しやすくなると期待する。