DX(デジタルトランスフォーメーション)へのニーズの高まりを背景に、求められるITインフラの姿が大きく変わろうとしている。DXには、素早いシステム開発が欠かせない。ITインフラ基盤もこのスピード感に追従することが求められているのだ。
開発・改善のスピードアップには、コンテナ基盤の活用が有望視されている。ソースコードを扱うようにITインフラを構築・共有・実行できるコンテナは、短い時間で開発・実行環境をデプロイできる。
しかも、必要に応じてコンテナの起動や停止を行い、リソースサイズをコントロール可能だ。機能単位の小さなアプリケーション(サービス)を組み合わせてシステムを実現する設計手法「マイクロサービス」と相性も良い。2019年は、コンテナ基盤の活用が当たり前となるはずだ。
ただし、コンテナは手軽に開発・実行環境を構築できる半面、「粒度が小さく、コンテナの運用・管理が非常に大変」(国立情報学研究所の佐藤一郎副所長)というデメリットがあった。
この問題の解決には「コンテナオーケストレーションツール」が有用だ。コンテナオーケストレーションツールとは、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイやスケーリング、管理などを自動的に行えるツールだ=。
ところが、コンテナオーケストレーションツールは複数の種類がある。「どのツールを利用すべきか」は、開発者の中でも意見が分かれる状態だった。
2019年にこの状況は一変する。ウルシステムズの漆原茂代表取締役社長は、「2018年にKubernetesで開発しようという流れになった。2019年は本格的な普及期に入る」と話す。既にKubernetesを活用している先進企業だけでなく、それ以外の企業でもKubernetesを使ったコンテナ基盤がDXを支える重要なITインフラとして広がっていくことが予想される。
処理をエッジ側に移す
IoT(インターネット・オブ・シングズ)やAI(人工知能)のインフラ基盤も変わる。2018年はクラウド側で学習させたモデルをAPI経由で利用する事例が増えていた。2019年は用途やシステム構成の多様化が進み「クラウドで学習したモデルをエッジ側に置いて、処理するようになる」(ITジャーナリストの新野淳一氏)と予想する。このような処理には、エッジ側に搭載される機械学習の計算に特化した「エッジ向けAIチップ」が重要な役割を担う。
これらは日経BP社が毎年実施している「ITインフラテクノロジーAWARD」の選考で5人の審査員が議論し、2019年にブレーク必至のITインフラ技術の1位と2位に選出したものだ。
審査会では、ここに挙げた技術以外についても熱い議論が交わされた。以下では、選考で上位に選ばれた技術、ノミネートされた技術について詳しく見ていこう。