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みずほ銀行が業務システムのアジャイル開発を始めた。超高速開発ツールを使い、約20年稼働する外国為替予約システムの操作画面を刷新中である。

 「IT構造改革の名の下に、2018年からクラウド基盤の活用やテストの自動化、ノンコーディングツールの導入、アジャイル開発の採用などを進めている」。みずほ銀行の福島亮一IT・システム統括第二部市場系システム推進チーム次長は、業務システム分野の新しい取り組みをこう話す。

 取り組みの1つが2019年9月に稼働を予定する外国為替予約システムのWebフロントエンド(Webアプリケーションの操作画面)の刷新プロジェクトである(図1)。外国為替予約システムは、みずほ銀行のトレーダーが外国為替証拠金(FX)取引や国際為替の売買などで使うものだ。トレーダーであり刷新プロジェクトに利用部門側の中心役として関わったみずほ銀行の栗原恵子国際為替部為替市場第三チーム調査役は「50人いるトレーダーに欠かせないシステム」と表現する。

図1●みずほ銀行が開発した外国為替予約システムの画面(テスト段階の画面)
図1●みずほ銀行が開発した外国為替予約システムの画面(テスト段階の画面)
(出所:みずほ銀行)
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 外国為替予約システムはもともと画面を生成するアプリケーションと、約定を管理したり取引を執行したりする中核の為替決済アプリケーションを、それぞれ別のハードウエアで稼働させていた。画面生成アプリケーションの歴史は古く、1990年代に米マイクロソフト(Microsoft)の開発ツールで作って使い続けてきたが、ハードウエアの保守が切れることを機に刷新を決めた。

「アジャイル的」でも効果あり

 2018年8月に刷新の検討を始めた。IT資産を有効活用する観点から、Webフロントエンドのアプリケーションを為替決済アプリケーションのハードウエア上で稼働させることにした。

 開発には、超高速開発ツールとアジャイル開発のプラクティスを用いた手法を採用した。刷新するWebフロントエンドは、ディーラー業務を支える重要な操作画面のため、基本的な機能は踏襲する。その一方で、「シンプルで直観的に操作できて、ある程度の分析機能がほしい」(みずほ銀行の栗原調査役)といったユーザーの要望にも応えたい。これには「設計から例えば1年後に完成するようなウオーターフォール型ではなく、利用者を巻き込んだ素早い開発手法が向いている」(みずほ情報総研の秋元清志銀行システムグループ市場・国際系システム事業部第1部次長)と判断した。

 刷新プロジェクトは2018年10月から基本設計に入った。今回の開発手法を秋元次長は「アジャイル的な取り組み」と表現する。要件定義やテストはウオーターフォール型で進め、詳細設計や実装にアジャイル開発のプラクティスを導入したからだ(図2)。みずほ情報総研はみずほ銀行以外の取引先ではアジャイル開発の実績はあるが、みずほ銀行向けの基本はウオーターフォール型だった。

図2●超高速開発ツールとアジャイルのプラクティスを採用した
図2●超高速開発ツールとアジャイルのプラクティスを採用した
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 ウオーターフォール型しか知らない開発現場をいきなりアジャイル開発に全面移行しようとすると混乱を招きかねない。みずほ銀行としても慣れないアジャイル開発によってプロジェクトが遅延するのは避けたかった。そこで、プロジェクトを滞りなく進めるため栗原調査役ら利用部門の担当者と開発部門のエンジニアがアジャイル開発の研修を受けた。「アジャイルソフトウェア開発宣言」といったアジャイル開発の考え方、アジャイル開発の進め方、ツールの使い方などを学んだ。